【第61回】 考えるよりやる

人はできるだけ楽をしようと思うものである。できれば苦労を避けたいと思う。しかし、実は、ほんとうに大変かどうかはやる前には分からないのだが、やる前にはどうしても過重に大変だろう、苦労しそうだと思ってしまいがちである。皿洗いをしたことがあるが、洗い物が沢山重ねてあるのを見ると、洗うのが大変で明日まで掛かりそうに見えるが、いざ、やってみると案外早く終わるし、大変でもなく、それに終わった後は気分もいい。

稽古でも時には行こうか行くまいか迷うこともあるだろうが、稽古にいって行って失敗したということはないはずである。自主稽古でも、ときには休もうかと一瞬迷うこともあるが、やり始めてしまえばそんな迷いは吹っ飛んでしまうものだ。考えたり、迷ったらまずやることである。やってしまえばはじめ考え悩んでいるときより容易で、簡単、そして気持ちよくできてしまうものだ。もしやらなければきっと後悔する。死ぬとき人生で一番後悔するものは、多分やるべきことや、やろうかどうか迷ったことを「やらなかった事」であろう。やって失敗したことではない。

行きたいところがあれば、行けばいい、食べたいものがあれば、食べるがいい。やりたいことは、やるべきだ。外国に行ってみたいと思いつつ、もう少し時間が出来てからにしよう、退職したら行こうなどと言っていると、時間的な余裕ができたときには、体力がなくなって行けなくなるかもしれない。何か食べたいものがあれば、食べに行けばいい。もう少しお金が貯まってからなどと言っていると、年とともに食欲もなくなって食べられなくなるだろう。特に、フランス料理やイタリア料理などの西洋料理は、食べたいと思う時期に食べておかないと、年をとってくると食べられなくなるものだ。

合気道の稽古も、体が動くうちにやった方がいい。どうしようか考えたり、迷っていることは、やることだ。最後に後悔しないために。