【第60回】 自分発見のために

人は明日に何かを期待して生きている。日本人の平均寿命は女性が86歳、男性が79歳であり、100歳以上の人も25,000人以上いる。人は少しでも長生きしたいと思っている。

合気道の稽古をしている人も、出来るだけ長い間稽古を続けたいと思っているはずだ。具体的な目標を持ち、その完成を目指し、より洗練させようという目的をもって、一日でも長く稽古し、長生きしたいと頑張る人たちもいるが、多くの人たちは、具体的な目標は持たないまま、長生きしたいと願っている。

生きるということは、「自分発見の旅」と言えるだろう。明日は新しい自分が発見できるかも知れないと明日に希望をもっているから、長生きしたいのではないだろうか。生きている楽しみは、感動を得ることである。いろいろの感動のなかでも、自分が何かをやり遂げることができたり、つくりあげたり、新しい発見をしたりして、自分の新しい面を見つけたときの感動は大きいものである。 合気道の稽古を続けるのも、明日はもっと上手くなって、この技もそのうち出来るようになるだろうと思い、自分の変わる姿、変わる自分に期待して続けているのだ。

高齢者になると、若い頃は考えもしなかった「死」ということを思うようになり、生の限界を感じるようになる。それまでただ漠然と明日に期待して生き、稽古をしていたのが、「死」を意識して初めて自分のやるべきことに積極的に挑戦するようになるようだ。「死」を意識してはじめてよい仕事ができるというが、このことだと思う。そろそろ自分発見のために、意識した稽古と生き方をしたいものである。