【第592回】 健康と不健康の諸刃の剣
合気道を健康のために始めた人、始める人は多い。稽古の主目的が健康でなくとも、始めた動機の何番目には「健康」が入っているはずである。
確かに、合気道は健康にいい。汗をかいて、体のカスを取り、毒素を排除する。筋肉をつけたり、筋肉の衰えを防ぐ。肺や心臓などの内臓を丈夫にする。体を柔軟にする等々である。
しかし残念ながら、稽古をすることによって不健康になる人もいる。
はじめはそれを不思議に思ったが、合気道を続けているうちに、不思議ではないことが分かってきた。
それは合気道の教えにある。その教えでは、物事は一面ではなく、表があれば裏があり、陰と陽、善と悪、明と暗があるから、健康があればその裏には不健康があることになるわけである。健康と思ってやっていても、不健康がその裏に控えているわけだから、要注意なのである。
健康だと自分では思ってやっていても、何かの拍子で不健康になるのである。
その何かとは、法則であり、理合いということになるだろう。どんなに健康だと思ってやっても、宇宙の法則の理に反すれば逆効果になるのである。
健康を目指している合気道において、不健康に陥る例と危険性をいくつか挙げてみる。
- その典型的例は、腰腹である。腰腹を鍛えなければならないが、間違った鍛え方をすると腰を痛めることになる。腰は体の中心の体であり、腹が用であるから、腹を働かせなければならないのに、腰をつかうと腰をいためることになる。技を掛けるのも、腰を支点に腹でやるのである。また、腹筋運動も、腰ではなく、腹に力を入れて腹を鍛えるようにしなければならない。
- 体(手、足、腰腹)を直線的につかうと、体を痛める。手等の体の部位が折れ曲がり、技につかえない。体は十字、螺旋でつかわなければならない。肩を痛めるのは手を十字につかわないからである。十字につかって肩を貫くことである。
- 体をバラバラにつかうと体を痛める。腰腹と手足を結び、腰腹でつかわなければならない。手首や肘、腰や膝をねじったり、ひねってしまう。
体の末端の手からつかうと、手に負担が掛かり過ぎ、力が出ないと同時に、手や肩を壊すことになる。体は体の中心の腰腹で末端の手先につかうようにしなければならない。
また、これに関連して、技を掛ける際は、腰腹、脚、そして手の順序でつかわなければ技は効かない。
- 息づかいである。体の動きに合わせて息をするとハーハー、ゼーゼーと苦しくなり、健康的ではない。気持ちよく、健康的に体を動かすためには、息で体をつかうことである。イクムスビ、阿吽の呼吸で技を掛け、体をつかうのである。速くの遅くも、強くも弱くも自由自在にできる。
尚、技が効くということは、健康にいいということにもなるし、技が効かなかったということは、不健康にやっているといってもいいと考える。
合気道は技を磨いて精進する武道であるが、技が少しでも上達するということは、より健康になった、健康的ということになるだろう。
従って、健康になるためには、よりいい技がつかえるよう、また、裏面に控えている不健康が出て来ないように注意しながら、技を磨くことでもあると考える。
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