【第589回】 高齢者の体づくり

60才、70才になると体は硬くなり、細くなり、体重も減ってくるし、体力も無くなってくる。合気道の稽古を続けている自分を見、稽古人、そして周りの人達を見ているとそれが分かる。

合気道は体をつかい、体力のいる武道であるから、最後まで体を整えておかなければならない。関節や筋肉を柔軟にし、体に筋肉をつけ、体重が減らないようにするのである。

関節や筋肉を柔軟にして、体を硬くしないためには、合気道の相対での形稽古をすればいいわけだが、以前から書いているように、ただ稽古をすればいいということではなく、体が柔軟になるように体をつかって稽古をしなければならない。間違ったつかい方をすれば、体はどんどん硬くなるはずである。高齢の稽古人にも、体をどんどん硬くしていっている人を見受けるので、残念である。

体を柔軟にするためにどうすればいいかというと、要は、息に合わせて体をつかい、技を使わなければならないということである。これはこれまで書いてきたことなので、詳細をここでは省く。

次に筋肉が落ち、体が細くなり、体重が減る問題である。これは自然の理であるが、稽古や心がけによって、ある程度、その速度を抑えることができるし、また、筋肉をつけ、体重を増やすことが相当できるだろう。

筋肉が落ちるのは、その筋肉を使わないから衰えるわけだから、そこの筋肉とその関連筋肉を使うようにすればいいはずである。つまり、当該・関連筋肉を鍛えるのである。鍛えるということは、年とともに衰える筋肉のスピードに負けないように筋肉をつけていくことである。だから結構大変なことである。筋肉がついてくれば、その衰えのスピードに勝ったことになる。年とともにその勝負は続くわけだが、その勝負もある時点までのはずである。100才では恐らくその勝負はもう出来なくなるだろう。

誰でも体験すると思うが、筋肉が付くと、必ず食欲が増すものである。細くなっていく体に肉がつき、体は丸みを帯びてきて、体重も増える。体が細く体重が少なかったときは、それほど食欲はなかったはずである。
また、睡眠もよく取れるようになるはずである。何度も目が覚めたり、トイレに行ったりしなくなったり、またはその回数が減るはずである。

このように高齢者になってきたら、高齢化との戦いをしなければならない。合気道の稽古はその意味でも素晴らしいが、高齢化のスピードに負けないように体を鍛えなければならない事に留意しなければならない。

合気道をやっていない、一般の高齢者にとっての健康な体づくりの基本は、体を動かすことであると思う。特に、歩くのがいい。出来れば一刻(いっとき)ほど歩くといい。足腰がしっかりしてくるし、食欲が出てきて、睡眠も深くなる。運動が健康な体と生活の基本になるはずである。