【第582回】 高齢者の役割と使命

最近、特に高齢者の問題の多いのが気がかりである。老人ホームでのトラブル、認知症の独居老人や認知症の独居老人の増加、「キレる老人」問題、事故の被害者だけでなく加害者になる交通事故のケースも増えている。そして高齢者の自殺などの問題である。
これらの老人問題は、生活水準の向上による平均寿命の大幅な伸びにより、高齢化が急速に進んでいることにあると言われている。

高齢化によって若者の税金負担は重く、将来の不安材料にもなり、結婚しなかったり、子供をつくるのを諦めることにもなるといわれる。
若者たちは、高齢者を非生産的で、自分の残りの人生を楽しもうとするだけの、もはや世の中の役に立たない存在と感じているのではないだろうか。

勿論、立派な高齢者も沢山いるし、まだまだ現役で活躍されておられる方もおられるわけだが、街やデパートや公共施設、老人ホームやデイサービス施設などで見る高齢者を目にすると、若者でなくとも考えさせられてしまうだろう。

人は生産的に生きていかないと満足できないように創造されているはずだと考える。社会に出て働くのは、モノを生産したり、サービスを提供してお金を稼ぎ、それで必要なものを買い求めたり、税金を納める。これで世の中は発展していく。そして経済が発展し科学も発展する。人は世の中を良くしようと働いているし、勉強しているのである。
しかしそれは無意識にやっているというより、人の本能でやっているはずである。会社の仕事だけではない、音楽でも絵画でも、また、学問でもすべて世の中を少しでもよくなる方向に進んでいるのである。その証拠に、人は誰でもすこしでも良くなろうとしている。特にいい方向に大きな進展をしたものには、ノーベル賞とか何とか賞が与えられて評価されるわけで、悪くなる方向への賞はない。

ここではこのいい方向に進むことを生産的と言っている。
それでは何故、人は生産的に生きるのか、生きなければならないのかということになるだろう。それは合気道の教えにある。

合気道では、修業の目標は宇宙との一体化といわれる。宇宙は180億年前に始まり、宇宙の完成を目指して生成化育を繰り返しているわけだが、小宇宙である人は、その宇宙完成のお手伝いをするのが役割であるといわれる。
人だけではなく禽獣鳥虫も草や木などの植物も、宇宙の万有万物は宇宙完成のためにそれぞれの役割をもって生まれてきたという。それを使命というのである。

禽獣鳥虫も植物も文句を言わずに嬉々として生きているように見える。人も、子供の時は同じように天真爛漫に嬉々として生きている。宇宙完成のお手伝いなどとは考えてはいないだろうが、生きている喜びを発散するエネルギーを発することが子供たちの役割であり、生産的に生きているということになると思う。
仕事をもって働いている内は誰でも、先述のように生産的に生きていると実感しているはずである。

問題は退職し仕事をしなくなってからである。高齢者が生産的に生きていくにはどうすればいいのか、高齢者の役割と使命はなんであるかである。
一口に言えば、宇宙完成のお手伝いをすることである。宇宙完成のための生成化育に参加するのである。高齢者だからこそできること、高齢者にしかできないことをするわけである。
例えば、

こんなところが高齢者の役割・使命であり、高齢者がこのように生産的に生きていけば、今の高齢者の問題がいくらか減ってくれるのではないかと思っている。
宇宙完成のために高齢者は下地があるのだから、後はそのために生きることを意識すること、そして少しずつ実行していけばいい。そうすれば生産的で元気な高齢者が増え、若者にも尊敬され、彼らに生きるすばらしさを教え、いい世の中になっていくのではないかと考える。