【第56回】 少しずつ続けよ

高齢者でも、いろいろな分野ですごい人がいる。学問やビジネスの世界、芸能や芸術の世界、そして武道や武術の世界でもすごい人がいる。勿論、日本だけではなく世界中にいる。

そのすごい高齢者の多くは、普通の人で、特別な才能があったとは思えないような人である。従って、自分の技をこつこつと長年にわたってたゆまず精進したに違いない。若いときは、才能や運などが大きく作用するが、年を取ってくるとそんなものはあまり関係なくなってくる。高齢者になってものをいうのは、ひとつのことをいかに長くこつこつやってきたかである。

ひとつのことが続くことは、その人の使命だからであろう。もちろん人はひとつのことだけのことをしているわけではないし、特に、若い内は、そのことに関係なく、時にはまるで反するようなことをするものだ。しかし、高齢になると、それらのやってきたことの全てがその"ひとつ"につながってくるのである。ということは、若いうちに、やりたいと思ったことはできるだけやっていた方がいいということであろう。

ひとつのことをこつこつやるのは、好きだからとか、なんとなくとか、無意識のうちにやるが、それがだんだんと"ひとつ"に繋がり、そして、これが自分のライフワークであり、自分はこの為にいろいろなことをやってきたとのではないかと思えるようになる。そして、それを自分の使命と思えるようになり、更にこつこつと続けて行くことになるのではないか。

ひとつのことを続けていると、次第に少しずつ上手くなってくる。それは、人は上昇志向があるからである。人は、決して現状の自分に満足できないようにできているらしい。明日の自分の更なる成長を期待して、今日を頑張るということを繰り返すのである。

それも、毎日やらないと昨日と明日のつながりが切れてしまい、続けることができなくなる。少しでもよい、毎日、こつこつと続けていくことである。そうやって長年続けて高齢になると、ひとつのことがやっとそれなりにできるようになり、人にすごいと感動を与えられるようにもなるだろう。合気道も、少しづつでよい、出来るだけ長くこつこつと続けよう。