【第549回】 出会いを大切に (一期一会)

後期高齢者という世代に突入してきたが、自分にとっては初めての経験であり、不安や腹立たしさもあるが、これまで経験したことがないことを経験したり、やったりしているので、新鮮さもある。また、若いころとは違った目で見たり、萎んできている脳で考えるので、若い時とは違った考えをもったり、見方ができるのが面白い。

合気道のお蔭で、物事には二面性あり、その面が一体となって存在したり、活動していることがよく見える。物事は悪い事ばかりではないのである。
若い頃は、その都合のいい一面しか見えなかったし、見ようとしなかったと思う。

若い頃からよく聞いていたが、年を取ると物忘れが多くなり、ひどくなると。
自分が年を取ると、なるほどと思う。自分がそうなっているのだから、それを実感できるし、そのことは間違いない。

しかし、年を取ると新たに分かってくるものもある。
物忘れにもいろいろあるということだ。例えば、物忘れの程度は、人によって違うということ。高齢になっても、細かいことまで覚えている人も沢山いる。
が、一般的に云えることは、程度の差はあるが、誰でも若い時よりも記憶力は衰えるということである。

私も若い頃でも、記憶力はよくなかったわけだが、年を取ったら更に悪くなったことは間違いない。
しかしながら、記憶力が減退し、物忘れがひどくなる半面、いいこともある。
新しい発見がどんどん増えるのである。物忘れがひどくなるにつれて、新しいことが頭にどんどん浮かんでくるのである。どうもこれらの物忘れと新しい発見とが表裏一体になって、絡み合い、うごめいているような気がする。
恐らく、物忘れし、記憶力が減退し、頭が空っぽになるから、新しいこと、本当に興味がある事や大事な事が頭に浮かんでくるのではないかと思う。
若い内に、記憶したものが頭に沢山あり、覚えたものが頭に詰まっている間は、本当に大事な事などが出てくる隙間がなかったのだろうと思う。
後期高齢者になったことに感謝している。

いろいろな面白い事が、所かまわず、不規則に突然、頭に浮かぶ。しかし、頭はそれを長期に保存してくれないので、少なくともその日の内に書き留めておかなければ、永遠の忘却の彼方に消えてしまうのである。それ故、頭に浮かんだこと、また、この合気道の論文にあるように、書きたい事等はその時、その日の内に書くようにしている。
その時、その日の内に書かないと、忘却の彼方だけでなく、二度とそれが表れないことを知ったからである。
明日は違うことに興味が移っているのである。今日、面白いと思っても、明日にはその興味を失っているか、半減しているのである。思いついたとき、その瞬間が最も感激したり、興奮するのである。

合気道の論文を10年間に亘り500回、合計2000編を書いたが、その論文を見てみると、その多くが、これは自分が書いたのかと自分で驚いている。それを書いた記憶がないのである。ましてや、それと同じ論文を書こうと思っても、同じには決して書けない。その時しか書けないのである。

やりたい事も同じである。年を取ったら特に、今、やりたい事は今やらなければならない。日が変われば、そのやりたい気持ちは変わるだろうし、忘れてしまうだろう。そうすると、お迎えが来た時、あれをやっておけばよかったと後悔することになるだろう。

思いついたことは、書いてみる、やってみる。それは出会いであり、一期一会である。二度と会えないかもしれないから、その出会いを大事にしなければならない。
出会いが無くなってきたら、そろそろお迎えがくるはずである。出会いは有難い。