【第539回】 最高の稽古となれ

高齢者といわれる頃は、まだ気にしなかったが、後期高齢者になってくると、自分の寿命ということを考えるようになってくる。寿命は有限であることを意識するようになり、やるべきことをやるべき時にやらなければならないと思うようになるのである。
やるべきことというのは、開祖がいわれている、各人に与えられている使命であり、そしてその使命のためにやるべきことである。使命は人から与えられるものではないので、己の使命はこれだと、他人にいう必要もない。一般的に、人からの報酬はない。己自身で知覚し、信行するだけである。

やるべきこと、使命と使命のためのやるべきことは、やる時にやらなければならない。先延ばしをしないことである。
合気道の稽古も、各自の使命を果たしていくためのやるべき事のはずである。
合気道の稽古とは、技を練って、宇宙の法則を見つけ、身につけ、宇宙と一体化し、宇宙人になることである。法則は無限にある。一つ一つ見つけ、身につけていかなければならない。

初めはひとつの法則から始まり、少しづつ増やしていくわけだが、無限にある法則を一人ですべて身につけることなどできない。何世代にもわったって多くの合気道同人によって引き継がれていかなければならないことになる。
しかし、その使命をもった一人の人間は、己の限界までそれを身に着けていく努力をしなければならない。寿命の有限性を悟った後期高齢者にとっては、時間との戦いになる。
だから、稽古は、明日もある、来年もあるなど思ってはできないことになる。極端に云えば、これが最後の稽古と思うぐらいで、稽古をしなければならないのだ。

合気の道で稽古をしていれば、己の最後の稽古が最高のものとなるはずだ。高齢者の稽古は、常にその稽古が最高のものになるようにしなければならないことになる。そこには、明日も来年も入る余地はないはずだ。今、その時、やる時にやらなければならない。