【第532回】 ロコモティブシンドローム

「ロコモ」という言葉が注目を集めているという。「ロコモ」とは、ロコモティブシンドロームの略で、日本語では、運動器症候群といい、骨や関節、筋肉などの運動器の障害のために自立度が低下し、介護の必要を迫られる状態を云うのだそうだ。
国内で、4,700万人がこの「ロコモ」の危険にあるという。人口の半分近くになる。

日本人の平均寿命は女性が世界トップ、男性も3位にあるが、健康寿命(健康に日常生活を過ごせる寿命)と平均寿命の差は、男性で約9年、女性で約13年あるのである。つまり、約10年間は、寝たきりなど、健康でない時期があることになるわけである。

「ロコモ」(運動器障害)の要因で多いのは変形性膝関節症などの関節疾患であるといわれるから、この「ロコモ」対策には、体を支える基盤となる下半身の筋力維持が重要になる。

だが、この「ロコモ」は高齢者だけの問題ではない。何故ならば、筋力と筋量は20才をピークに、それ以降は、特に下肢筋力の減少が急速に進むからである。

合気道は、「ロコモ」対策としても有効であるはずだ。合気道の形稽古で、受けを取り、ころがったり起き上がったりすることによって膝関節、下肢をつかうので、そこの筋力や筋量が維持、増強するからである。
ただ、合気道の教えにあるように、物事には必ず表と裏、善と悪がある。そして稽古にも陰(かげ)の面があるから注意する必要がある。その陰とは、稽古をすることによって膝を痛めることである。
しかし、この原因と対策は簡単なことである。体の表を使うという法則を守ればいいわけで、それをやるかやらないかということだけの話である。

合気道の稽古をやっている内は健康であり、一般の通常生活に問題はないはずだから、「ロコモ」の問題なく、膝も下半身も機能していることになる。
出来るだけ長く合気道の稽古をし、健康寿命を延ばし、己の寿命との差を少しでも小さくしたいものである。

参考資料  日刊工業新聞「産業春秋」(2016.5.16)