【第51回】 無責任

ラーメンを食べるとき、よほど注意しないと、長い麺を喉を通る長さに噛み切っただけで胃に流し込んでしまう。これが大概の人の食べ方だろう。それに酒を飲んだ時、酔ったときはその長さが長くなるようだ。口と歯は、俺の仕事はやった、あとは胃や腸で適当にやってくれというわけだが、考えてみれば無責任な話だ。

しかし、このような無責任は、ラーメンを食べるときだけではない。他のものを食する場合も大体同じようなものだし、一般生活でも同じようなことが多いのではないだろうか。仕事では、これを「無責任」とか、「たらいまわし」という。合気道でも、技をかけるとき、がむしゃらにやって、あとは野となれ山となれとばかりに、やりっぱなしにしがちである。

ラーメンを食べる場合、口と歯はラーメンを十分噛み砕き、唾液を混ぜて、次に送る胃が少しでも容易に消化しやすいようにしなければならない。技の稽古でも接点を切れないように、節々を大事にし、一瞬々々を大事にし、次々に次の動きに繋げていくようにしなければならない。

年を取ってくると、体力も衰え、呼吸も弱くなり、集中力もなくなるので、諦めたり、好き放題やったり、無責任になりがちだ。
先輩、年配者は合気道を後世に引き継ぐ義務がある。自分だけ満足すればいいとか、あとはどうでもいいとか思わず、次世代に伝えるべく頑張って欲しいものだ。ただし、いいこと、正しいことは伝わり難く、悪いこと、間違ったことは10倍の速さで伝播するので、注意をする必要がある。後世にいいものを残し、ツケを残すような、無責任なことはしたくないものである。