【第372回】 長く続けることが大事
合気道に入門したころは、既に5年、10年稽古をしている先輩方と稽古させてもらい、話をさせて頂いたものだ。だが、当時、自分は果して10年、いや5年も稽古を続けることができるのだろうか、と思ったりしたものだ。
はたして2,3年もすると壁にぶち当たり、稽古をやめようかと悩んだ。先輩の一人に話したところ、その先輩は一言、「10年黙って稽古しろ」と言われた。とんでもないことを言う先輩だと思ったが、尊敬していた先輩のいうことなので、なんとか続けることにしたのである。お陰で、10年はおろか、半世紀も稽古を続けることになった。
稽古事、習いごとは、短期間ではモノにならない。さらに、稽古は一生ものであり、これでよいということはないはずである。従って、稽古を止める時が最高ということになる。開祖にも、これで完全、完成ということはなく、「まだまだ修行じゃ」と晩年も言われていた。
稽古を長く続ければよいということではないが、長く続けなければならない。稽古を長く続けるということは、上達の必要条件である。しかし、十分条件ではない。必要十分条件は、上達するように長く続けることである。
だが、どんな稽古も同じであろうが、合気道の稽古も長く続けていくのは容易ではないはずだ。だからこそ、稽古を長く続けてやるのには意味があるのである。
稽古を長く続けるにはいろいろな条件を満たさなければならない。
その満たさなければならない条件とは、
- 健康:自分だけでなく、家族も含め、健康でなければならない。病気や怪我をすれば、稽古どころではなくなるだろう
- 経済:稽古をし、続けるためには、お金が必要である。そのお金が工面できなくなったり、生活のためにお金を稼がなければならなくなれば稽古はできなくなる
- 時間:時間的な余裕。会社の仕事関係などで忙しくなっても、稽古の時間がとれなくなる
- 体力:稽古に必要な体力。年を取って体力がなくなり、受け身も取れなくなったら、稽古はリタイアである
- 環境の変化:平穏な環境。家庭環境が変わり、家族の賛同を得られなくなるとか、転筋移動などの会社事情が変わって、道場に通えなくなる等も、不利な条件となる
- 壁:壁にぶち当たらないこと。あるところから先に進むことができない、いわゆる、壁にぶち当たってしまうと、先が見えなくなり、先への希望もなくなり、やめてしまうことになる
等などであるが、これらの条件をすべて満たして稽古を続けていくのは容易ではないだろう。
合気道では、開祖をはじめ、多くの先人が稽古を長く続けておられ、亡くなる直前まで稽古をされていた。やることを死ぬ直前まで、長年かけて精一杯おやりになったのであるから、使命を果たされたといえよう。すばらしいことである。
自分の先の事はわからないが、合気の稽古はできる限り長く続けたいと思っている。そのためには、先述の条件(問題)と戦わなければならないわけだが、中には年を取るに従って難しくなるものもあるだろう。これからは、これまで以上に難しくなるだろうが、がんばっていきたいものだ。
Sasaki Aikido Institute © 2006-
▲