【第339回】 老いてもなお挑戦

「老いてはますます壮(さかん)なるべし」という言葉がある。年を取っても、年寄りと決めつけず、ますます、意気盛んでなければならない、ということだろう。

 人は元気で少しでも長生きしたいと希望するものだ。だが、残念ながら寿命があり、また、年と共に老化し肉体も心も衰えていくのがふつうである。

老化がどのような仕組みで起こるのか、まだはっきりとは解っていないようだ。これまでに解っている明らかな事のひとつに、細胞の数が減ることによって、臓器が萎縮するというのがある。

下の表は、各臓器の重さの変化を表したものである。(東京・緑風会病院・篠原恒樹氏作成)

臓器の重さの変化(単位=グラム)

  若年 老年 割合
1330 1260 -5.3%
心臓 250 350 +40.0%
肝臓 1230 830 -32.5%
脾臓 140 63 -55.0%
腎臓 130 105 -19.2%

心臓だけが逆に増えるのは、年をとるにつれて血管が硬くなって血液の流れが悪くなり、ポンプである心臓が一生懸命働かなければならなくなるからである

若年に比べて、老年で臓器の重さが減るのは、細胞が減るからだそうである。その他にも、老化の原因としては、あらかじめ遺伝子に組み込まれているという「プログラム説」、身体によいはずの酸素も形が変わるとDNAを傷つけるという「活性酸素説」、「遺伝体質」など様々あるという。

老化は個人差や男女差が大きいようである。特に老年期には、個人差の幅が大きくなるという。例えば、65歳の人の体の各部分の働きは、20歳ほどの上下幅があるという。つまり、65歳でも45歳ぐらいの若さの人もいれば、85歳ぐらいに衰えた人もいることになる。人は誰でも、できれば老化を予防して、20歳くらい若く生きたいはずである。

老化を予防する二大要素は、体と生き甲斐であるそうである。合気道を稽古しているうちは、体を動かしているし、生き甲斐にもなっているので、老化の予防になっていることと思われる。

さらに、少しでも老化を予防したいと思うなら、合気道の目標である宇宙との一体化に限りない夢と情熱を持つことである。そして、目標を達成するための強い意志と想像力を持ち、体を宇宙の条理に則った技にはめ込んで使って、稽古をしていけばよいのではないだろうか。年を取ったから駄目だ、などという固定観念にはとらわれないことである。

人は年を重ねただけで老いるものではなく、目標を失ったとき、夢を失くしたとき、生き甲斐を失くしたときに、老いてしまうのではないだろうか。若さを保とうと思えば、老いてなお挑戦していくことであろう。

参考文献:「臓器の重さの変化」緑風会病院・恒樹恒樹氏