【第30回】 あせらず地道に

道場で稽古をしているとき、相手や他の人たちが技を上手くやっているのに、自分は思うようにできないと思ってあせったり、むきになってがむしゃらにやる人を見かけることがある。若いうちや初心者にはがむしゃらに稽古をして、体や内臓を鍛えるのもいいが、高齢者が同じようにやると体を痛めてしまうことになりかねない。

技がうまく出来ないのには理由があるのであって、頑張ればできるというものではない。一つの技がうまくできるには、上手くいくための無数の要因があるだろう。少なくとも幾つかの不可欠な重要要因があって、その要因だけでも身についていなければできないのである。技がうまく出来るために10の重要要因があるとすれば、その1つの要因が欠けていても技は上手く決まらない。

稽古とはそのような一つ一つの要因を身につけ、つぶしていくことでもある。いろいろな技をやることによって、多くの要因が体に入り込み、そして合気の体ができてくるのである。特に、基本技といわれるものの中に、合気の体にとって重要な要因となるものが潜んでいる。

他人を気にせず、あせらず、着実にその要因を一つ一つつぶすべく稽古をしていけば、いつの日か、上手くいかなかった技もできるようになるはずである。それを信じ、自分を信じて稽古を続けていくしかないのではないだろうか。