【第199回】 体を痛めないために

運動は健康によく、体にもよいと思って、合気道の道場に通っている人は多いことだろう。確かに受け身を取ったり、筋や筋肉を伸ばせば、体は軽くなったような気持ちになるのでも、健康によいとは言える。

しかし、反面、肩を痛めたり、膝を痛めたり、腰を痛める人も見受けるようだ。稽古しなければそうならなかった訳だから、いちがいに運動することが体によいとは言い切れないものがある。

物事には必ず両面あるわけで、いい面もあれば悪い面もあるわけである。従って、稽古をやれば健康によいと盲信することなく、よい面を少しでも多く取り入れ、悪い面を出来るだけ遠ざけるようにするしかないだろう。

合気道では年を取ってくると体を痛める人が増えるようだ。特に多く痛める部位は、肘と肩と膝と腰のようである。若いときは、せいぜい手首を痛めるぐらいだろう。それもほとんどは、稽古相手にやられたものである。年を取ってからの体の痛みは、相手や他人のせいというより、自分自身のせいと言えよう。

年を取ってきて体を痛めるのが増えるのは、年のせいだけではないようだ。体を痛める最大の原因は、間違った体の遣い方を長年続けることによって、その部位に大きな負担を掛け、その結果痛めるものだろうと考える。今回は、肘と肩と膝と腰を痛めると考えられる原因と、痛めないための方法などを考えてみたいと思う。

【肘】
原因: ○腕を直線的に遣っている ○屈筋で体の裏の筋肉を遣っている ○呼気で腕を遣っている
解決法: ○腕は反転々々しながら遣う ○腕の外側(肘側)を遣う ○吸気で技を掛ける

【肩】
原因: ○肩を支点に手腕を遣っている
解決法: ○肩を貫いて、胸鎖関節を支点に手腕を遣う

【膝】
原因: ○足先を膝より前に出し過ぎて、歩を進めたり技を掛けている ○体の裏側(胸、腹側)で技をかけている ○爪先の方に重心を掛けている
解決法: ○足の上に体重がのるように移動する ○爪先より前に膝を出さない ○体の表(背中側)で技を掛けるようにする ○踵の方に重心が落ちるようにする(土踏まずなら更によい)

【腰】
原因: ○体をねじって遣っている
解決法: ○ナンバで歩を進め、陰陽で手足を連動して遣う ○体を面で遣う

体を痛める原因や痛めないやり方は、まだまだいろいろある。例えば、正しい息遣いである「生産び」をしなければ、息が止まり、動きが止まってしまう。そうなると力でやらざるを得なくなり、無理が生じて体を痛めることになる。地の足側の手を遣うと、手は動かないものだから力も出ず、相手に抑えられてしまうことになる。敢えて無理に力をいれると、手(手首から肩まで)を痛めることになる。

体のどこかを痛めたということは、「そのやり方、体の遣い方は間違いだ」という体からのメッセージなのである。早急に直さなければ、本当に痛めてしまって再起不能ということにもなりかねない。稽古さえやっていれば治ってしまうというのは、若いうちだけである。

長く稽古を続けられるよう、体を痛めないように、体と相談しながら、注意して体を遣い稽古していきたいものである。