【第116回】 エージレスでいこう

今は「老人」という言葉を使わなくなって、代わりに「高齢者」という言葉が使われるようになった。現在では高齢者というが、昔は65歳から老人となった。この頃の平均寿命は68歳であった。私自身も65歳以上に入るが、高齢者、ましてや老人という実感はどうしても湧かない。もちろん、多少は老化している兆候はあるが、まだ若い頃とたいして変わらないし、場合によっては若いときより能力がアップしているものもある。合気道の稽古においても、体力、腕力も若者に劣っているようでもないし、肺活量、スタミナなどもますますついているようである。

開祖はよく「50、60歳はまだまだ鼻ったれ小僧だ」と言われていたが、60歳を過ぎるとそれがよく分かる。「わざ」もやっとできるようになってくる。60歳までは、本当に肝心のことが分かっていなかったし、理に適った「わざ」はできなかったと言える。65歳以降、徐々に世の中のこと、自分のこと、そして合気道が分かってきた。人によって多少の違いはあるだろうが、65歳ぐらいからいろいろなことが分かってきて、理に則った「わざ」が出来るようになった。としたら、65歳が高齢者(昔の「老人」)というのはあまり相応しくはないだろう。

今、日本の平均寿命は約80歳である。100歳以上の人も34,000人もいるのである。それに、人は125歳ぐらいまで生きることができるという。これらのことから考えて、早くとも75歳以上にならないと高齢者の仲間に入いる資格は無いのではないか。法律的に65歳で高齢者というのは変えるのが難しいだろうから、自分自身で、60歳とか65歳でもう高齢者になったと思わず、125歳までまだまだあるのだから頑張ろうと思わなくてはならない。65歳、70歳ぐらいはまだまだ体力もあるし、やりたいことができる状況にある。合気道の修行も、本格的にできるはずである。定年になったり、定年退職したら高齢者になるのではなく、新たなスタートにならなければならない。合気道の修行を続けるには、年齢不詳のエージレスにならなければならない。

参考資料 『「隠居」は明治の遺物』日野原 重明(聖路加国際病院理事長)
       (日経ビジネス 2008年6月30日号)