【第10回】 人生まだまだ

いま、地球を支配しているのは人類である。科学が発達し、人類は他の動物や植物を支配し、地球や自然まで自由に支配できるとまで思うようになった。

確かに、豊かになり、知識も増え、地球上どこにでも行けるし、宇宙にでも飛び出して行けるようになった。食べたいものは食べられるようになり、ほしい物はたいてい手に入る時代になった。地球上の出来事は、家にいても分かるようになり、世界中と電話やメール等で容易に交信できるようになった。
人類は今や、何でも出来ると思うようになってしまっているのではないだろうか。

しかし、人類はほんとうに何でも自由にでき、すべてが分かったのだろうか、また、人類は永遠に地球や他の生物を支配できるのだろうか。人類の歴史はたかだかまだ7−8千年だ。その前の爬虫類の時代でも数千万年間続いて、そして滅亡している。人類の歴史はまだまだ短いし、永遠に続く保証も無いのではないか。

人類がどんなに進歩して、年をとっていろいろな経験を積んでも、まだまだ出来ないこと、分からないことがある。
火山、地震、台風、ハリケーン、日照りなどの自然災害に対して、発達した科学をもってしても人類はなすすべがないのである。多額の金をかけ、最新の技術を投入している気象庁の翌日の天気予報でさえよくはずれる。

人は永遠に生きたいと願望しているが、残念ながら死は阻止できない。

また、自分たちがどこからきてどこにいくのか、何故生まれてきたのか、人類の使命はなんなのかもまだ分からない。宇宙は無限であるということも、深く考えると頭がおかしくなってしまいそうだ。

知らないことは沢山あるが、知れば知るほど知らないことが分かる。武道の稽古をしていても、初心者はすべて分かったように錯覚したり、傲慢になったりするが、長く修行すればするほど自分の未熟さ、技の使い方の下手さ、体の動かし方の難しさが分かってくる。

高齢になっても、それで満足しないで、少しでも物事を追求し、知識を増やし、そして知恵をつけ、それを若者に伝承していって欲しいものである。