【第7回】 名人・達人になろう

一般的に名人・達人とは武道家に対していわれる場合が多く、スポーツだと名人・達人という超人的な人はなかなか出ないようである。超人的な人間もオリンピックや世界大会には登場するが、数年経つと忘れられてしまうようだ。

武道家はご承知のように、多くの名人・達人を輩出しているが、スポーツの世界では武道でいう名人・達人という考えはないのだろう。それは恐らく、スポーツでは今勝つことが重要で、将来に期待をかけるものではないからであろう。

しかし、スポーツでも、第一線から引退したり、相手を戦いで勝つのが目的でなく、自分との戦いの修行に入れば、名人・達人になる入り口にいることになるのではないか。本当の戦いは他人ではなく、自分である。自分こそは最大の、そして永遠の敵である。
いつかオリンピックや国際試合で活躍したスポーツ家が名人・達人として活躍することを期待したいと思う。

達人という称号は、80才以上、名人は90歳以上にならなければ与えられないもののようである。名人・達人になるには努力の他に、個人ではどうしようもない時間的要素もあることになる。

真の名人・達人とは、人間の極致に至った人である。人間が普通到達できないような境地に至り、「神」から授かったことを伝授する人である。これは、才能と努力がないと到達できない。

人はだれでも無意識の内に、人間の可能性を広く、深く、拡大することに憧れている。そしてこの領分を広げた人を賞賛する。より早く走る、高く・遠く跳ぶ、美しく動く、美しく描く、品格をもって書くなどは、人を感動させる。人間はこんなことが出来るのだと感動し、自分が人間であること、生きていることに感謝するのである。

しかし、もし自分との戦いに勝つのが名人・達人への道としたら、これは誰にでも可能性があることではないだろうか。特に、長く豊富な人生を経験してきた高齢者は、その道に入りやすいはずだ。真の名人・達人になれなくとも、ミニ名人・達人くらいにはなれるだろう。多くの高齢者がミニ名人・達人になって、若い世代に刺激と喜びを与えて欲しいものだ。