【第669回】  合気道の鍛錬は神業の鍛錬

10年、20年と稽古を続けてくると、必ず大きな壁にぶつかるはずである。
その間には何度も薄い壁に出会って、それは乗り越えてきたわけだが、乗り越えられない壁にぶち当たるわけである。
何故、以前の壁は乗り越えられたのに、今度の壁はぶち破ることが出来ないのかと云うと、以前のものは同じ次元、つまり量的な努力によって解決することが出来たということである。例えば、力をつけ、力で制したとかである。しかし、今度の壁は量的な努力ではどうにもならない壁で、質的に変えた努力をしなければならないのである。いうなれば、これまでと異なる事、多くの場合、これまでと正反対の事をしなければならない壁なのである。

長年稽古をしている稽古人や合気道家はプライドもあるので、それまでのやり方を変えるのは非常に難しい様に見える。そして無理をして、これまでのやり方でやり、そして体を壊してしまったり、引退することになるものと思う。

稽古は長く続けなければ上手くならないが、長く続ければいいということではない。長く続けることは、上手になる必要条件であるが、十分条件ではない。つまり、正しいやり方で長く続けていかなければならないことになる。

正しいやり方を道という。合気道も正しいやり方で、正しい道を進まなければならないということである。
合気道の道とは何かというと、宇宙の道であると、大先生は言われる。そしてその道を進むための鍛練は神業の鍛練でなければならないといわれているのである。大先生はこれを、「この道は宇宙の道で、合気道の鍛錬は神業の鍛錬である。」(合気神髄 P.43)と云われている。神技とは、「世界を和合させ、人類を一元の元に一家たらしめる」「宇宙和合の御働きの分身・分業としてご奉公する愛の大精神」「宇宙の気を整え、世界の平和を守り、森羅万象を正しく生産し、護り育てる」(合気神髄 P.40-43)等である。
そしてこの神業を己の心身のうちで鍛錬するのが、宇宙の道であり、合気の道ということになるだろう。

そして「これを実践してはじめて宇宙の力が加わり、宇宙そのものに一致するのである。」(合気神髄 P.43)と云われるから、宇宙の力で技をつかえるようになり、そして厚い壁も打ち破ることになるだろう。