【第65回】 技は下半身で

人は仕事をするにあたって手を重点的に使うが、力を出す時にも手から出すものと思って力んでしまうようだ。技をつかう場合、初心者は概して手を振り回して、手さばきでやろうとする。相手が弱ければそれで倒れるが、大体はぶつかったり、はね飛ばされてしまう。

手と頭は連動しているといわれ、手の動きは頭で調整できる。手の出し方、角度、スピードなど眼で見ながら、頭で考え修正していけば、技はだんだん改良されることになる。しかし、手だけに頼っていると、技の進歩は先へ進まない。手は微妙な動きができるものの、大きな力は出ない。大きな強い力は、体重と引力とスピードの掛け合わせから出る。従って、足や下半身からの力が大きい方が、力が出ることになる。また、スピードや拍子(リズム)が出るのも下半身ということになる。  

技をかけるとき、先ず気が動いて腹が動くが、次に足が動かなくてはならない。この時、初心者は足ではなく、手を動かしてしまうので技が止まってしまうのである。技が効くには、動きが始めから終わりまで同じでは効かない。渦のようにはじめ小さく速く、だんだんゆっくり大きくするか、その逆となる。この拍子は下半身でやらないとできないものである。

技は、下半身でやる。これは足を地につけた立ち技だけでなく、座り技でも同じである。坐技呼吸法でも、手で操作すると相手とぶつかってしまうし、あまり大きい力は出ない。大きな力は、畳に接した足から出る。手と足を連動して、重心を左右に移しながら技をかけるのである。坐技呼吸法だけでなく、坐技及び半身半立ちの形の稽古は手さばきではなく、下半身でやることの重要さを学ぶのにいい稽古法であろう。

技は下半身でかけるといっても過言ではない。