【第617回】  円の力を接線方向へ

合気道の技は円の動きの巡り合わせであると、開祖はいわれている。確かに、合気道の技をつかう際、手首、腕、腰、足を、それぞれ円でつかわないと上手くいかない。相手の力にぶつかったり、抑えられてしまったり、己の動きを止めてしまうことになるからである。

円の動きにするためには、手、足、腰などの体を陰陽十字につかわなければならない。体を陰陽十字につかわなければ円の動きにならないのである。
円の動きでない動きは、直線的な動きであり、中心がない動きということになる。

円の動きには、中心があるから、遠心力と求心力が生まれることになる。
合気道では、腰腹が中心となり、腰腹が陰陽十字で動けば、末端の手に遠心力とその反作用の求心力が生まれる。
そしてこの腰腹による手先の周回スピードが増せば、遠心力が増し、そして力が増すことにもなるわけである。

しかしながら体を周回するだけでは力はでない。我の手を彼の手が掴んでいるとすると、一緒にぐるぐる回ることになり、結び(くっつき)はするが、彼を投げたり抑える力は出て来ない。

体の周回から力が出るのは、円の力を円の接線方向に出す時である。

従って、合気道で技を掛ける際は、体を円くつかうが、円いだけでは駄目で、そこから接線方向に腰腹からの力を出してつかわなければならない事になる。これによって相手を導くことができるのである。
その好例が、片手取り四方投げである。我の手を図のCで彼に取らせたら、HKの接線方向に力を出し、彼を導くのである。そしてその後、我の円に彼を入れてしまえばいいのである。

この円の力を接線方向に向けなければならない事がわかりやすいのは、杖の突きの素振りである。体の周回だけでやると、まっすぐに動くべき杖は前後左右にぶれてしまう。周回から接線方向へ突き出し、引かなければならない。
杖の素振りで円く動くのは、手首、腕(肘、肩)、腰腹、足である。これらの部位を円く、そして接線方向につかうのである。

杖だけではなく、剣でも突きでも同じである。円の動きの巡り合わせということになるだろう。