【第611回】  癖を直す

合気道の稽古も長く続ければ続けるほど癖が増えてきて、そしてそれが体と心にこびりついてくる。自分の癖に気づいて、直していかないと、上達は止まってしまうし、場合によっては体を壊すことになるだろう。

癖はよくない。何故ならば、癖が上達を邪魔するし、体を壊すことにもなるからだ。
癖は見る人が見ればすぐわかる。その癖によって体が上手くつかえず、いい技が生まれないのである。
例えば、相手に手を掴ませる際に、手の平を下に向けたり、または上に向けて出す。息を吐いて力を出そうとか相手を倒そうとする。自分のお腹を常に相手に向けてしまっている。手を振り回す等々である。

癖とは何かというと、開祖が言われる「カス」である。長年稽古して溜まった余分なモノである。入門したての頃にはなかったモノである。宇宙生成化育を邪魔するモノである。長年稽古をすれば、必ず「カス」は溜まるわけだから、癖がつくのは仕方がない。大事な事は、こびりついた「カス」の癖に気づき、それを取り去ることである。

開祖は、合気道は禊であると言われており、この「カス」である癖を取り去る禊ぎをしなければ合気道にならない。
しかし、癖を直そうとしてもなかなか直らないものである。その最大の理由は、自分の癖に気が付かないことだろう。自分のやっている事、やり方に問題などないと思っているのである。
いい先生や先輩などに指摘されて気がつくだろうが、その時は直そうとしても、後は元に戻ってしまうのが常のようだ。
癖を直すには、一大決心と努力が必要である。癖を直すのは無理と諦めたらそれで終わりで、上達を諦めることになる。

癖を直す、癖がつかないようにするためには、自分の体づかい、技づかいが宇宙の営み・法則に則っているかどうかを、常に熟考、比較検討、そして反省しながら稽古をしていかなければならないだろう。