【第535回】  上達の秘訣の基本 その3.「息のつかい方」

上達の秘訣の基本要因のテーマには、@体をつくる A体のつかい方 B息づかいであるが、ここまで、この内、@体をつくるA体のつかい方を書いた。
従って、今回は三つ目のB息づかいを書く。

合気道は技を練って精進していくが、技を練り、いい技を身につけていくためには、体が大事だし、その体のつかい方も大事であるが、息づかいも非常に大事である。技は足で掛けろともいわれるが、技は息で掛けろとも云っていいほど大事なのである。
そのためには、次のような稽古をしなければならないだろう:

  1. まず、息も縦と横の十字であることを実感し、息も十字につかうようにしなければならない。縦は腹式呼吸、横は胸式呼吸である。
    腹と胸で大きく開いたり閉じたりして、空気や気(宇宙エネルギー)を出し入れしたり、そして天地の息や気と繋がるようにしていくのである。
    これを実感したり、身につけるに適した稽古としては、
    ○正面打ちの素振りの稽古と剣の素振り
    ○横面打ちの素振りの稽古と剣の素振り
    がいいだろう。
    素手でも、縦横の息に合わせて、縦横十字に上げ、下げするのである。
  2. イクムスビ
    昔から日本の行者がやっていたと云われる息づかい「イクムスビ」で技をつかわなければならない。イと吐いて相手に接し、クで息を吸いながら技を掛け、ムで技をきめ、スで離れて、ビイでまた相手に接する。これが乱れてしまえば、技は上手くつかえない。初めは、意識してイクムスビに合わせて息をつかい、技をつかっていかなければならない。
    「イクムスビ」の息づかいが分かりやすく、身につけやすい稽古法として、
    ○片手取り呼吸法
    ○四方投げ
    などであろう。
  3. 火の息である、吸う息が大事
    初心者はどうしても、息を吐きながら技を掛けよう、決めようとするものであるが、その技はあまり効かない。息を吐くと、力みが出るが、その割には真の力が出ないからである。合気道では、引く息(吸う息)は「火」、吐く息は火を消す「水」であるという。エネルギーのある真の息である「火」の息で技を決めるようににしなければならない。
    「火」の息の威力が実感でき、また、身につけやすい稽古は、
    ○二教裏
    ○半身半立ち四方投げ
    等であろう。
    吐く息ではなく、引く息(息を吸いながら)で技を決めるのである。技を手で決めるのではなく、息で決めるという感覚になるはずである。手足など体で技を掛けるのと違って、息は、遅くも早くも、強くも弱くも、自由自在なのである。
    また、引く息で遠心力が出るから、引く息で相手を引力でくっつけたり、浮かしたりすることができるのである。
息は己の心と体を結ぶし、相手の体をくっつけてしまうし、そして相手の心を導いてくれる。先述したように、技は息で掛けるといってもいいほど大事ということになる。

これで「上達の秘訣の基本」である3つの要因は終わるが、この基本要因はまだまだいくらでもあるはずである。その内にひょこひょこ姿を見せるだろうから、その時はまた、それをまとめて紹介することになるのだろう。

最後に、これらの基本中の基本の稽古が身につけば、それまでの魄の稽古から、合気道が求めている魂の稽古に進めるのではないかと思う。つまり、これらの基本の稽古は、次の次元への土台づくりであり、入り口であると考えている。