【第506回】  基本から応用へ

習い事は基本が大事である、といわれている。だが、これが容易なことではないのが常である。我々がやっている合気道でも、基本を心から大事にしている人はそう多くはないように見受ける。

その原因を考えるに、まず、基本とは何か、がよくわかっていないことだろう。だから、基本の重要さもわからないで、適当なところでお茶を濁すことになるのであろう。

さらに、基本を大事にしてしっかりやればどんな効果、メリットがあるのか、が見えないことであろう。

三つ目は、基本の稽古というのは最も大変なものである。だから、上記の二点のこともあって諦め、もっと楽な稽古をするのではないかと考える。

これは、誰もが通る道ではないかと思う。私の場合もそうであった。しかし、ここに来て、基本の大事さを改めて実感したのである。

数年前から基本技(形)の一教、入身投げ、四方投げ、二教、小手返しを、原点にかえって稽古してきた。おかげで、今までわからなかったことがわかって来たし、見えなかったモノが見えてきて、改めて基本の大事さを確信することになったのである。

基本を大事にするということは、やるべきことをやるように稽古するということである。つまり、理合いの稽古をすることである。その稽古のためにあるのが、一教、入身投げ、四方投げ、二教、小手返などの基本技であると思う。この基本技は技の理合いが見つけやすく、そして会得しやすくできているのである。さらに、宇宙の営みを身につける可能性がより容易なのが基本技、ということになるだろう。

基本技で理合いの技づかいや体づかいができるようになれば、心体は理合いで動けるようになる。すると、難しそうな技でも応用技でも、自由につかえるようになるはずである。大先生(開祖)が、技は何万と出てきた、といわれ、応用技でも何の技でも自由自在につかわれたわけだが、これは基本がしっかりとしていたからであるだろう。

最近、応用技が自然に出るようになってきた。例えば、片手取り四方投げなら、10以上の応用技ができるだろう。大先生のようにはいかなくても、基本をしっかりやれば、それに従って応用技も増えてくるようである。こうして、基本技をさらに宇宙の理合い・条理に近づけていくのである。

基本をしっかりやればやるほど、応用技が出てくるのである。応用技を沢山やりたいなら、応用技を稽古するよりも、基本技を深めた方がよいのである。これも、合気道の教え、パラドックスであろう。