【第458回】 取りの攻撃方法とそれに対する技
前回『取りの意味』では、「取り」には受けに対する技をかける人という意味と、片手取り、太刀取り、短刀取り、杖取り等の攻撃方法という意味がある、と書いた。今回は、この攻撃方法とそれに対する技には大事な意味がある、ということを書いてみたい。
攻撃方法には徒手と得物があるが、今回は徒手での取りにしぼって書いてみよう。
取りの攻撃方法と、それに対する技には、大事な意味がある。合気道の多様な攻撃方法は、合気の体をつくるためや、宇宙の法則に則った技を会得するために必要であり、しかも各々の攻撃方法には異なるポイントがあって、そして、それが極意ともいえるものなのである。
従って、片手取りも両手取と同じようにやっていては、その極意を身につけることはできないし、稽古の意味も半減してしまうことになるだろう。
そこで、攻撃法と、そのための技の極意手ともいえる特徴やポイントや教えと思われることを書いてみよう。
- 諸手取り:こちら(取り)の一本の手に対して、受けである相手は二本の手でおさえてくるから、おさえられている一本の手で技を使おうとしても無理がある。つまり、その手を振り回しても、技にはならないということである。
ここでの教え、つまり極意とは、相手の二本の手よりも強力なものを使わなければならない、という事である。それは、体幹であり、腰腹などである。体幹や腰腹からの力がつかえるようになれば、他の攻撃法(片手取り、胸取り等)や技の形(四方投げ、一教等)でもつかえることになる。技は諸手取り、とりわけ諸手取呼吸法ができる程度にしかできない、といわれている。
- 片手取り(逆半身):もっともポピュラーな取りであるが、これに対する技づかいは、よほど注意しないとその重要性に気がつかないでやってしまうことになる。この技のポイントは、手を右、左、右と規則的に陰陽につかい、足も同じように陰陽につかい、しかも、同じ側の手と足を同時に、右、左、右と規則的に陰陽でつかわなければならない事である。手と足がいわゆるナンバの運びにならなかったり、手、足が右、左、右と規則的に動かず、どこかで規則違反をすれば技にはならないことを、一番わかりやすく教えてくれるものと考える。
- 片手取り(相半身):相手が持っている手の箇所を動かすのではなく、その対照にある腰腹から動かさなければならないことや、腰腹を反転、反転させて技をかけなければならないことを、最もよく教えてくれるものだろう。交差取りなどはその典型である。
- 両手取り:手足はナンバで、右、左、右と規則的につかわれなければならないが、片手取りと違って両手を取られているので、陰から陽に変わる手がしっかり腰と結び、腰からの力で働かなければならない。片方の手だけ陽、陽で使い、他方の手を陰、陰で使っていると、必ず相手にその手をおさえられたり、動けなくなってしまう。手と足が右、左と規則正しくつかわれているかどうかを確認したり、正しくつかうためには、最適な取りの稽古である。
また、片手取りも両手取と同じように、手足をつかわなければならないが、両方の手をつかまれているので、間違ってつかうと苦労することになる。
逆に、両方の手を相手は持ってくれているので、手足を正しく陰陽でつかえば、片手取りよりも相手を二倍以上導きやすくなる。そのためには、しっかり両手を持たせて稽古すべきであろう。
- 正面打ち:この技のポイントは、合気道の理念である「ぶつかってぶつからない」を会得しやすいことであると考える。つまり、向き合った相手が振り下ろす手刀を、はじき返さずにくっつけ、相手と一体となるのである。物理的に不可能と思われることを、この正面打ちの技によって身につけることができる。
そのためには、気持ちと体を相手に向けて一直線に進める、手は左右陰陽、十字につかう、手の小指球の下にある手刀(狭義)をつかう、などやるべきことが沢山ある。
- 後両手取り:ポイントは体の表(背中側)をつかう事、手を十字につかう事、持たれている手先からでなく、腰で手をつかう事、そして、相手がくっついてしまう感覚を得ること、である。力は体の表を通るものであるから、体の表をつかって技をかけなければならない。表と裏の力の違い、働きはなかなかわからないようであるが、この後両手取ではそれが分かりやすい。うまくつかえるようになれば、相手を無力にし、背中にくっつけることができるようになる。さらには、片手取りでも正面打ちでも、相手をくっつけることができるようになる。
この他、胸取り、肩取り、両肩取り(前後)、横面打ち、突きや肩取りと面打ちや突きのコンビネーションなどがある。
しかし、分量も多くなったし、基本的な徒手の取りはこんなところだろうから、今回はここまでとする。大事なことは、この他にも多くの取りの攻撃法があるが、それが何をポイントにしているかを見定め、そして、それを身につけていくことである。取りの攻撃法が違っているのに、片手取りも両手取もすべて同じようにやっていたのでは、先に進めなくなるだろう。
Sasaki Aikido Institute © 2006-
▲