【第428回】 諸手取呼吸法で身につきやすい「技が効くための要素」と呼吸力

前回の第427回では「諸手取呼吸法のできる程度にしか技はつかえない」というテーマで、諸手取呼吸法がいかに大事な稽古法であるか、を書いた。また、諸手取呼吸法は呼吸力養成法であって、相手を投げたり抑える技ではないので、注意して稽古しなければならない、とも書いた。

諸手取呼吸法が大事であるということは、諸手取呼吸法から大事な事が学べるし、身につけることができる、ということであろう。その大事な事とは、四方投げや入身投げなどの形稽古ではなかなか身につかなかったり、身につけるのが難しいものである。

では、本題の「諸手取呼吸法で身につきやすい『技が効くための要素』」を見ることにする。

諸手取呼吸法の稽古法には、やはり三つの段階があると思う。その各段階で、身につくものが違ってくる(順不同):

1.体をつくる段階、相手を倒そうとする段階

2.呼吸力養成法の段階、相手が自ら倒れるようになる段階
3.呼吸力養成の段階
以上は、呼吸力養成のための前段階である。これらの要素が身についてはじめて、呼吸力をつける稽古、本格的な呼吸法に入れることになる。

1の段階では腕力はつくが、呼吸力はつかない。2の段階で「技が効くための要素」を身につけて、はじめて相手をくっつける引力ができる。その引力とは、遠心力と求心力を兼ね備えた力である呼吸力であり、それを身につけることができる、ということである。

この段階になれば、多少強くつかまれようと、ふわっとつかまれようと、関係なく相手と結んで動けるようになる。大きく動こうが、速く動こうが、結びが切れなくなるので、呼吸力がつくことになる。諸手取呼吸法でできるようになれば、小手返しや四方投げなどの形稽古における技の練磨においても、呼吸力の養成ができるようになる。そうなると、形稽古でもどんどん呼吸力がついていくことになる。

このように、諸手取呼吸法からは多くのことが学べるものであるし、諸手取呼吸法ができないと、身につかないものもあるのである。

有川定輝先生がいわれたように、諸手取呼吸法ができる程度にしか技はつかえない、というのは真実であると確信する。