【第40回】 瞬間を大切に、しかしそこからスタート

合気道の道場稽古はほとんど毎回別の人と組んでやる。相手に技が効いたり、上手く倒せたり、倒せなかったり、相手によって違うだろう。
稽古を一瞬々々、一生懸命やることは大切である。

自分の技を相手に効かそうとして効いたり効かなかったりする。効けばうれしいだろうし、効かなければくやしいだろう。しかし、稽古で大切なのは、相手を技で決めたとか、投げたとかということではなく、上手くいった感覚を覚えておくことと、上手くいかなかった場合は、なぜ上手くいかなかったのか、どうすれば上手くいくようになるのかを考えることである。

一緒に稽古をやった二人というのは、それまでおのおのが別々に稽古をしてきた者どうしで、ほとんど偶然に近い状況のもとに稽古を一緒にやったわけである。真剣に稽古をやろうとすれば、なんとか自分の技を相手に効かそうとするわけだが、結局、技が効いたり、効かなかったり、相手に決められたりして、相手の実力と自分の力や、力の差がわかってくる。

しかし、お互いの実力の差というのは、稽古をやった時点のことで、時間が変わればそれも変わるものだ。
スポーツの世界では、どんな試合であれ、オリンピックであれ、優勝はそのときのものであり、もう一度試合をして同じ人が優勝するという保証はないのである。従って、次の試合にまた優勝するために、試合が終わったときから厳しい練習をはじめなければならない。

合気道でも二人で組んで稽古をすれば、やったとかやられたと思うだろうが、それはその時点のことである。次にまた一緒に稽古したとき、同じような間違いをしたり、同じ問題を引き起こさないようになっていれば、前に一緒にやった稽古が生きたことになり、次の一緒にやる稽古までに考えたことが正しかったことになる。たとえまた同じ人と稽古をしても、その間に別々の稽古をしてきた二人が、お互いの力やその差が変化したか、どれだけ一生懸命稽古してきたかを確認できる機会となる。だから、これは自分自身に対する真剣勝負ともいえる。

出会いでの稽古を大切にしながら、そして、そこから新たな稽古の再スタートをするという繰り返しをしながら、精進をしていこう。