【第385回】 開祖の教えに従って

合気道の修行には、完成という終わりはない。だから、途中で挫折するか、未完成のまま終わってしまうか、ということになる。できるだけ挫折しないように、そして、未完成で終わるのは解っていても、少しでも、一歩でも、完成に近づいて、終わりたいものである。

合気道の稽古を長年続けてくると、教えて頂いた先生や先輩が次々に亡くなられて、寂しくなる。それと共に、大きい問題を抱えるようになる。

先生や先輩がおられたころは、いろいろ教えて頂いたり、問題があればお聞きすることもできた。ただ黙ってついていけばよかったのが、だんだんと先導してくれる方がいなくなってくるのである。

問題は自分で解決しなければならなくなるし、そもそも問題を自分で見つけなければならなくなる。

問題にはいろいろあるが、根本的な問題が出てくると、容易には解決できないものである。例えば、修行に迷いが出たり、今やっている修行がこれで正しいのかどうか解らなくなったり、どの方向に行けばよいか迷ったり、どちらの道を進むべきか選択しなければならない、これでよいかどうか判断しなければならない、など等である。

根本的に重要な問題を解決するためには、原点にもどることが原則である。これらの問題解決は、合気道修行の根本的なことであるから、やはり原点の開祖に戻ることである。しかし、開祖はもはやこの世には居られず、直接質問をしたりお話を伺ったりできないので、開祖が残されたものから教えて頂くしかない。それは、合気道の聖典ともいえる『武産合気』『合気真髄』である。

この聖典には、合気道家が持つであろう多くの問題の解決がある、と信じる。真剣に解決すべく問題が出てきたら、この聖典を読んでみることである。

もっとよいのは、常日頃からこの聖典を読み続けることである。自分は何者なのか、どこから来て、どこにいるのか、何のために生きて、合気道を修行しているのか、等も教えてくれるはずである。

もちろん、技が上達するためのヒントも書いて下さっている。自分のつかっている技が正しいのかどうかも、教えて下さるはずである。

開祖の教えに従って稽古を続けていけば、問題は解決され、迷いは消えるだろう。合気道に出会って稽古できる有難さや、さらなる精進の意欲も増幅するであろう。迷って遅きに失しないよう、開祖の教えに戻るのがよいだろう。