合気道は、技を練磨して精進していく武道である。そのため、通常は二人がひと組になって、捕りと受けを交互に稽古していく。
しかし、技は思うようには相手にかからないものである。相手によってはうまくかかるときもあるが、体力や腕力がある相手等には思うようにかからないものだ。
技のうまいへたの基準は何か、を考えなければならない。受けをぶん投げて、びしびし決めるのがじょうずで、相手に技が効かないのをへた、とも言えない。それが、上手下手の基準ではないと考える。何故なら、それは受けと捕りの相対的なものだからである。
合気道の技は宇宙の営みを形にしたもので、そこには宇宙の法則があるといわれている。宇宙とはいわないまでも、そこには法則があることになる。例えば、左右交互に使う陰と陽、心と体の十字、体の十字と円、折れない手を作ったり相手を巻き込んでしまう螺旋、円の動きの巡り合わせ、遠心力と求心力、三元の剛柔流、八力と引力の養成等などである。
つまり、技の上手下手は、この宇宙の法則にどこまで則っているか否か、ということになると考える。
これらの法則をひとつひとつ身につけなければならないが、技をうまくつかえるためには、個々ではなく、すべての法則に総結集して働いてもらわなければならない。もし、法則のひとつでも働かなければ、技は真にかかったことにはならない。
宇宙の法則は、宇宙の営みや歴史や大きさから見て、無限にあるだろう。すべての法則を身につけて使っていくことは、不可能である。それ故、一つでも多くの法則を一つづつ身につけていくことしか出来ない。
技がうまくかかるかどうかは、身につけた法則によるわけだから、次のような技の方程式が成立するのではないだろうか。
技の上手さ=技の効果=
(体の完成度)x(体の使い方)x(息の使い方)x(心の使い方)x・・・
これを、さらに詳しくすると:
=(強靭x柔軟性xカス削除)x(十字x陰陽x円x螺旋etc.)x(縦横十字x生産び)x(愛の心で導く※)(※注:第347回の思想と技「心で導く」参照)
技をうまくかけ、相手を制するためには、この方程式にある要因がどれだけあり、そしてどのレベルにあるか、ということになる。また、得意な要因をさらにレベルアップし、不得意を失くしていくということにもなるだろう。
技をうまくかけるためにもっと大事なことは、(体の完成度)、(体の使い方)、(息の使い方)、(心の使い方)の中の各要因を増やしていくことである。そのために、相対稽古で宇宙の法則を見つけ、そして身につけ、それを技に使っていくわけである。
これが、技の練磨であると考える。