【第333回】 上達するために

合気道で稽古をしている稽古人は誰でも、合気道の技がうまくなりたいと思って、稽古に励んでいるはずである。うまくならなくともよいとか、下手でもよいと思って、稽古を続けている人はいないはずである。

しかしながら、なかなか思うように上達しないし、どうすれば上達するのか試行錯誤しているのが現状であろう。

合気道は技の練磨を通して上達していくのだが、この技を練磨するのが難しい。そもそも宇宙の法則・条理に則った技がどんなものなのか分かり難いので練磨しようにも練磨できないからである。従って、合気道の形稽古をただ漠然と続けているだけでは、上達が難しいのである。

ではどうすれば上達できるかというと、形稽古だけを上達のための稽古と思いこまず、日ごろ行なっているすべての事を、上達のための稽古に結びつけることである。

相対で形稽古に入る前には、体さばき、転換、入身転換、一教運動、関節の鍛錬法、呼吸法等などの基本準備運動があるが、これもきちっとしっかりとやることである。相手を倒したり、固めたりする形稽古には直接関係ないと思い、気持を入れずに手を抜いたりしないように、気をつけなければならない。

また、手足を伸ばす準備体操や道場の出入りの礼、正面に対する礼、指導者に対する礼も、しっかりやることである。

基本準備運動、準備体操、礼などなどをしっかりやるということは、つまり、慣れでやらない、自分の限界・極限までやる、そして、意識してやる、ということである。

意識するのは、

道場の外でも、稽古はできるものである。例えば、いつも何気なくやっている歩きや呼吸である。歩き方や呼吸は、日ごろ無意識のうちにやっているが、意識してみると、非常に奥深いものである。これが深まっていくと、技のレベルも変わっていくはずである。

道場で細かなことを一つ一つレベルアップしていく稽古を積み重ねていくと、道場の外でもレベルアップしようとする訓練をするようになるだろうし、また日常生活、仕事でも少しでもレベルアップしようとするようになるはずである。上達しようとすることが、すべての場で習慣化するのである。

上達していくためには、線的稽古をしていかなければならない。たまにやる点的稽古では、上達は難しい。点を線にし、そしてその線をどんどん太くしていくこと、厚みをつけていくことが、上達ということになるだろう。

技の稽古だけではなく、基本準備運動で関節を曲げる運動でも、二本足を使って歩く稽古でも、自分の体に神秘を感じるはずである。手をじっと見ると、5本の指があり、3つづつ関節があって、指同士は十字に働くように構成されているようだし、手の7つの関節もそれぞれ十字に機能している。このような精妙なものを、誰が何のために創ったのか、摩訶不思議という他ないだろう。

ということは、極限まで意識を入れて体を鍛えていくと、そこに宇宙を感じるはずである。そしてこの宇宙を感じることこそが、宇宙との結びの第一歩となる。その結びを切らないように体を使い、運動することが、宇宙の法則に則っているということになるのではないだろうか。これこそ、宇宙の法則に則る技であろう。

技の練磨を試行錯誤しながら続けると同時に、いかなることも一つ一つレベルアップしていくことこそ、上達の秘訣であるだろう。