【第303回】 やるべきことと順序がある(続)

合気道は技の練磨で精進するが、技の練磨に入る前にやるべきことがある。つまり、それができなければ技の練磨にはいるのは難しいというものである。

まずは、技と形の違いを認識し、研究していかなければならない。合気道の技とは、宇宙の営みを形にしたものであるので、容易に見つけることはできないだろうし、簡単には身につかないものである。だから、合気道は人生をかけて練磨することになるのだが、そのためにやるべきことがあるし、それを避けて稽古をしていると、技の練磨に入れないことになる。

そのMUSTの幾つかを、思いつくまで書き出してみる:

等など

これらのテーマを身につけるために、基本技の形稽古を繰り返し稽古するわけだが、形稽古ではどうしても相手を投げたり、倒したりすることに意識がいってしまい、本来の稽古のテーマを忘れがちになる。それ故、上記のテーマに最適といわれる稽古をするのがよいだろう。

それは、「諸手取り呼吸法」である。ただし、この「諸手取り呼吸法」を技と勘違いして稽古すると、稽古のご利益はない。名前が示すように、これは「法」であり、「技」ではない。技は武術的に言えば、相手を倒したり抑えることができる術であるが、呼吸法は呼吸力練磨法ということで、合気道の技の命でもある呼吸力の鍛錬法である。腕力で相手を倒すことより、相手が倒れなくてもいいから呼吸力がつくように鍛錬しなければならない。

この「諸手取り呼吸法」は、非常に重要であるはずだ。かつて、本部道場の有川師範は常々、「諸手取り呼吸法」ができる程度にしか技はつかえないといわれていたし、「諸手取り呼吸法」がまともにできなければ、合気道の技はつかえないともいわれていた。当時はよく分からなかったが、最近では確かにそうだと実感している。

まだまだ他にもあるだろうが、あとは技の練磨を通して身に着けていけばよいだろう。技の練磨ができるようになれば、合気の道に乗ることができるはずだから、あとは道に外れないよう、外道に落ちないように、前に進むことである。道に乗るためには、まず、やるべきことをやらなければならない。それが道へのるための梯子段のように思える。