【第26回】 スキをつくらない体勢と動き

相手と稽古し、技をかける場合に、相手を倒そうとばかり考えて相手の正面に立ったり、横向きになったり、相手になぐってくれと言わんばかりに顔を突き出したりする、スキだらけの体勢をとる人が多い。
合気道には試合がなく、争いがないといわれるが、武道である以上、どんなときでも、スキのない体勢をとって動かなければならないはずだ。
打ってきたり、掴んでくるのは、相手を倒したり、押さえたりしてやっつけようということであるから、技が完全に決まって終了するまでは、攻撃が続いているはずである。スキがあれば叩かれたり、蹴られたりしてしまい、やられてしまう。

受け側が攻撃を仕掛ける場合も、最後までスキをつくらないことが大切である。正面打ちで攻撃する場合も、手は中心線を外れないように上げ、相手の突きがいつ来てもかわせるように振り上げなければならない。手の軌跡は、この中心線上にある急所をカバーしながらなぞっているとも言える。もし、正面打ちで中心がはずれた打ち方をすると、受け側は、中心に或る急所、鳩尾、喉、眉間などを突いてくることになるので、非常に危険なのである。

また、二教や三教などで腕の関節を取られて受けを取る時も、頭を下げたり、横向きになってしまいがちである。これは逃げの体勢であり、降参の姿である。受けというのは、本来、攻撃のための体勢であるはずだから、常に押さえられている手首などは、自分の顔の正面にくるようにし、腹は出来るだけ相手の中心、腹に向けるようにすべきである。受けをとりながら、相手の体勢や動きに、常にスキがあるかどうかを感じながら動けば、お互いのために緊張したいい稽古になるだろう。