【第255回】 技遣いを大切に

合気道は技の練磨で精進していくので、技遣いが大事である。だが、技のうわべをなぞっていくだけでは、真の技は身に着かないはずである。真の技とは「技を生み出す仕組みの要素」の「技要素」の集まりであり、宇宙の法則に則ったものである。従って、人間が適当につくりだすものではなく、すでに宇宙にあるものを見つけ、それを頂いて身につけていかなければならないことになる。

技を精進することは、「技要素」を身につけることであるが、初めはそれが中々難しい。理由は、まず、「技を生み出す仕組みの要素」の「技要素」が技にあることに気がつかないからである。パワーとスピードで技が掛かると思うのである。特に、初心者のうちはそうだろう。

次に、技要素、例えば、十字という技要素があると聞いて分かったとしても、それを技に組み込んでいくには、時間も忍耐もいるからである。また、それは自分自身で認識し、身に付けていかねばならず、初心者のときと違って、他人に頼ることができないのである。

しかし、技遣いを注意していけば、「技要素」を認識し、身につけることは出来るようになるはずであるし、そうしなければならない。

技遣いがどれだけ上手くなったかは、通常、相対稽古の相手にその技をかけて判断するが、それはあまり正確な判断基準ではないだろう。なぜならば、同じ技でも相手によって、上手く掛かったり掛からなかったりするからである。

それでは何を判断基準にすればよいのかと考えると、結局は自分自身ということになろう。自分がよいと思えばよい。よいと思うとは、その技を掛けて気持がいいということでもある。気持ちがいいということは、天地に対して、相手に対して、そして自分自身に対して恥じることはない、自分の最高のモノを出したという誇りと満足感を持てることでもあろう。

技や技要素が宇宙の法則に則ったものでなければ、相手は満足してくれないし、天地も喜んでくれない。そして、自分も満足できない。自分が真から満足できる技遣いができるように、技遣いの重要性を再認識し、地道に稽古を続けていきたいものである。