【第201回】 上達とは

合気道は技の練磨を通して上達していく。光ある妙技をつくっていくことであるという。

間違いなく、だれもが上達しようと稽古しているはずである。合気道は相対稽古で投げたり投げられたりするものなので、お互いに、あるいは本人の思い込みで、相手のうまい下手、上達したしない、などがなんとなく分かったり、分かったつもりになるものである。

上達にはいろいろな段階があるはずである。初めは相手に崩されたり、関節を決められないように、心・体を鍛えることであろう。受身がある程度取れるようになり、ある程度の関節技に耐えられるようになる段階である。

次は、「技の形」を覚える段階である。一教、入り身投げ、四方投げなどの基本技を覚え、投げたり受けが取れるようになる段階である。

ここまでの段階では、自分より力のない相手には上手くできるが、大きくて力のある相手とは思うように動けないという、相手に左右される稽古である。

次の段階は、相手をどうこうするのではなく、自分の不得意なことをカバーし、得意なことを伸ばすという、自分のレベルアップの稽古をする段階である。

相手が強ければ技も掛からない場合もあろうが、一生懸命やって駄目なら、出来ないのだから仕方がない。その失敗を糧となるように、稽古に役立てればよい。自主稽古などで研究し、その次か、あるいは何時か、出来るようになればよい。相手が強かろうが弱かろうが、自分には関係ない。自分が上達することが重要なだけである。自分との闘いである。

この自分との闘いの段階に入ったなら、本格的な修行に入れるだろう。技を磨きながら、自己を探求するようになるはずだ。そして、自己の心身を探求するにつれて、自分の周りのことを知りたいと思うようになる。人間はもちろんのこと、動植物、地球、月、星、宇宙などなど、どんどん興味が拡大するようになるようである。これが次の段階だろう。

この段階で妙技をつくるためには、自分以外の大きな力の協力がいることが分かってくる。つまり、人の力だけでは大したことは出来ず、摩訶不思議の妙技は生まれないということが分かってくるのである。

これから先も沢山の段階があるだろうが、次の段階か最終段階なのかは分からないものの、開祖の言葉をお借りすれば、「宇宙と一体となる」ことがあるようである。宇宙との緒結びで、宇宙の響きで技を遣うというのである。

人がなぜ階段をどんどん登って上達しようとするのかは分からないが、そうしないと満足できないのは、人がそのようにプログラムされているのかも知れない。自己実現理論で世界的に有名なアメリカの心理学者、マズロー博士は、「人間は自己完成に向かって絶えず成長する生物である」と人間を定義していることからも、人は誰でも自己完成に向かって上達し続けないと満足できないのかも知れない。人は自分の気持ちと宇宙のプログラムに従って上達を目指すのが、よいのだろう。