【第18回】 本を読む

開祖が昇天されて早や37年。開祖を知っている合気道の稽古人は大分少なくなった。われわれ開祖と直接接することができた稽古人は、開祖から合気道とは何か、稽古とは何か等、すぐには理解はできなかったものの、開祖の話す言葉として聞くことができたし、目や耳や体にも思い出が残っている。
開祖の言葉を聞く機会がなかった稽古人は、ビデオで垣間見ることができるだろうが、おそらく想像する他にないだろう。

合気道を練磨していくということは、開祖が示された合気の道を精進するということであろう。そこで開祖を知らない人が開祖の考えを探求しようとすれば、開祖が話されたことをまとめた本か、開祖が書かれたものを集めた本で知るしかない。

開祖のお話をまとめられたのは『植芝盛平先生口述 武産合気』(高橋英雄編)、「合気道新聞」に掲載された開祖の道文を集大成した『合気道開祖・植芝盛平語録 合気神髄』である。それに、植芝吉祥丸前道主著で植芝盛平開祖監修の『合気道』とその続編『合気道技法』、基本技を手書きのイラストで描かれた合気道開祖植芝守高(盛平)著『武道練習(合気道)』などは、合気道を修行するものの必読書であろう。この他にも「武道」誌もあるが、入手するのは難しい。しかし、前掲の書籍は復刻版もあり、今でも容易に入することができるものである。

稽古をしていると、だれでも「目標を見失ったり、壁にぶつかったりすることがある。そんな時、示唆を与えてくれるのも本である。本を読むということは、目標の確認、今やっていることの確認、壁にぶつかったときや問題が起こったときのヒントを得ることにある。迷ったときに我流でやってしまうと、自己流になってしまい、先へ進むことができなくなるものだ。

勿論、合気道に直接関係ない本でも合気道に参考になる本が沢山ある。また、自分が問題意識をもっていると、そのソリューションを与えてくれる本に出合えやすい。

最近、合気道に関するよい本として『植芝盛平の武産合気』(柏書房)が出版された。この本には開祖が話され、書かれた難解な言葉を分かりやすく説明されているので、この本を読んでから開祖の本を読めば、多少は理解しやすくなるかもしれない。著者の清水豊氏は中国武術家であるが、長年にわたって合気道の研究を続け、これまで「合気道マガジン」などの武道誌に開祖植芝盛平や合気道に関する記事を数多く掲載している。この本の一読もお勧めである。