【第152回】 合気道の鍛錬目標

合気道には試合がないし、勝負もない。スポーツのように試合や勝負があれば勝つように鍛錬すればよいわけだが、試合や勝負がない合気道の鍛錬には、他に目指すものがあるはずで、その目標を目指して鍛錬していかなければならないことになる。従って、鍛錬の目標をしっかりもっていないと、修行が続かず挫折することになろうし、合気道の目指すものと違ったものになってしまう。

合気道には試合がない、勝負がないと言ったが、大きな意味では試合はある。しかし、この試合や勝負は、武技を争って他人と戦うものではなく、自分との試合、自分との勝負である。自分に打ち勝っていくことである。今日の自分のレベルより少しでもレベルアップすべく、自己への挑戦である。開祖が、己の心の中に生ずる「争う心」に打ち勝たなければならないともいわれたように、己の「争う心」との勝負でもある。この自己に打ち勝つことが一つの鍛錬目標である。

合気道は、自己をつくり、自己を完成させる「真人の養成」の道と言われる。真人とは、天地、宇宙とむすんだ人で、与えられた自己の使命を為し遂げる人である。真人になるためには、合気道の極意を知らなければならない。

開祖が言われる合気道の極意は、「己を宇宙の動きと調和させ、己を宇宙そのものと一致させることである。」と言う。その為に、合気道の技を練磨するのである。何故ならば、合気道の技は宇宙の営みを型にしたものであるから、正しい技が遣えるようになれば、宇宙の動きもわかることになるはずである。

技の練磨は想像以上に重要である。開祖によれば、合気道の鍛錬によって「宇宙のいとなみが自己のうちにあるのを観得することができれば、真の武道としての合気道をマスターしたことになるという。

合気道の鍛錬目標とはこんなところにあるようだ。