【第127回】 肩を遣う

合気道は技の形稽古をしているわけだが、技は思うようには決まらないものでる。技が決まらないのは、多くの理由と原因があるが、その一つに「肩」の遣い方がある。ここでいう「肩」とは、肩甲骨をはじめ、三角筋、僧帽筋などによる肩の部分を指す。

技が上手く掛かるには、地、下肢、腰や腹などの体幹からの力が手先まで伝わらなければならない。肩が硬く、貫けていないと、その力が肩で止まってしまい、手先まで伝わらないことになる。まずは、肩が貫けていなければならない。

相手が手先を掴んでいる場合だが、手先には相当の負担が掛かっているわけだが、持たれている手先でその力を返そうとしても、それは難しい。相手がよほど力がないか、受けをとってくれなければできないものだ。だから、相手の手よりも強力なものを遣わなければならない。それが、肩である。肩の力は手先よりも強力であるし、力の種類も違うようだ。力の法則の一つとして、末端で出す力は、中心からの力より弱い。中心に近ければ近いほど強い力がでるのである。従って、手先よりも体の中心に近い肩の方が、強い力が出るということなのである。但し、強い力を肩から出すためには、肩と体の中心である腹・腰と結んでいなければならない。また、技を掛けるときには、手先を先に動かさず、手先より先にまず肩を遣わなくてはならない。

三つ目の肩の遣い方は、遣っていない側の肩の使い方であるが、これが難しいようだ。合気道の身体の遣い方は、左右を陰陽で交互に遣わなければならない。しかし、人には闘争本能があるのか、左右の肩を共に陽々で同時に遣ってしまい勝ちである。

肩取りは勿論のこと、手首を掴まれても、打たれたり、突かれたりしても、相手と接している側と反対側の陰の方の肩を遣わないと、技は効かないものである。使用している陽の手足と反対側の肩を遣うのである。この陽の側の肩は遣えない。何故ならば、相手と接している手およびその手と結んでいる足と肩も支点として動かせないからである。手の支点を動かさずに、反対側の肩を遣えば、自由に動くし、遠心力が働き、強烈な力がでるのである。

基本技であり、誰でも何年もやっているのに上手くいかない技と「わざ」(体遣い)がある。例えば、入身転換法、諸手取り呼吸法、正面打ち入身投げ、正面打ち一教裏等である。最大の原因は肩遣いにあると言えそうだ。

前述のように、上手くいかないのには幾つかの原因があるので、これが出来れば技が必ず上手くいくとはいえないが、肩が遣えるようになれば、その分、技は上手くかかるだろう。手さばきでやらず、肩を上手く、自由に遣うようにしてみたらよいだろう。