【第10回】 繋がりのある稽古

若い内は、力いっぱい稽古をしないと気がすまないものだ。そして、相手を倒すことに一生懸命になる。若い内は、こうしながら筋肉ができ、肺や心臓が強くなり、そして体力、気力がついてくる。逆にこういうパワーの稽古を若い内のやっておかないと、体力もつかず、武道の体ができない。

しかし、年配になってパワーの稽古を続けるのは難しい。年配者は年配者のやり方で精進しなければならない。その一つが"繋がりのある稽古"をすることである。
"繋がりのある稽古"とは、がむしゃらでその場しのぎの稽古ではなく、
○ 過去と未来
○ 昨日と明日
○ 自分の人生観
○ 社会や家庭
○ 世界観
○ 宇宙観
等と繋がる稽古でなければならない。

"繋がりのある稽古"をすることによって、自分の修行の過程やレベルだけでなく、人間としての自分の過程やレベルが分かり、まだ何をしなければならないのか等も分かってくる。10年後の理想の状態を想像して、明日に期待して稽古をし、生きていくのである。また、一つの合気道の技をやる場合も、それが出来た創成期の武術、柔術としての技に繋がることができなければ、今やっているやり方はどこか間違っているのかもしれない。

自分がやる技は、自分の人生観の現れでもある。技と人生観はそれぞれ相関関係があるわけだから、深い人生観をもっていればそれなりの技が出るはずである。素晴らしい技を使えるように、人生の勉強も大切だし、これまでにものにしたものを技に繋げるのも大切である。

"繋がりのある稽古"は、社会や家庭とも繋がりを持たなければ、社会や家庭からの評価は得られないし、見放されていく。稽古は、家庭のため社会のために少しでも生かされなければならない。

世界、人類、宇宙は平和、幸福と争いの無い、愛に満ちた理想郷を待っている。このよう繋がりのある稽古をしていけば、この世界、人類、宇宙はほんの少しかもしれないが、よい方に向かうと確信する。