【第5回】 技の名前を大切に 「小手返し」の小手とはどこか

合気道の技は4000とも8000ともあると言う人がいるが、すべてを数えた人はいないだろう。開祖は技は無限に出てくると言われていた。いずれにしても技は沢山ある。

しかし、その技の数にくらべて技の名前は極端に少ない。また、同じ技でも所や時代によって名前が違っているものもある。

その数少ない名前の付いている技は大雑把にいうと基本技であり、重要な技である。つまり、この技が出来なければ応用技や上級技ができないというものである。つまり、一〜三教(第一教、第二教、第三教;腕押さえ、手首返し、肘きめ)、入り身投げ、四方投げ、天地投げ、小手返しなどである。

この内、一教から三教の名前には技のポイントは示されていないが、他の入り身投げ、四方投げ、天地投げ、小手返しの名前の中にはその各々の技のポイントが凝縮している。

中でも「小手返し」の名前には、注目すべきである。何故ならば、往々にしてこの名前が誤解されたまま技が解釈されているからだ。

「小手返し」は、小手を返す技である。しかし、返すべき小手はどこを指すのか、小手とは何か、が分かっていなければ技が違ってしまう。

小手とは手先、腕先のことであり、手首ではない。多くの人は手首を返す「手首ひねり」になっているので、相手は手首に痛みを感じるが崩されたという感じがしない。正確に小手を返されると、手首に痛みを感ぜずに体全体がひっくり返されてしまうものである。勿論、しっかりした腕や指の使い方、"縄をなうように手を返す"(故有川師範)などができないと、小手も返らないが、まず小手はどこにあるのかを知らなければ始まらない。

技がよく出来るようになるためにも、先人が考え抜いてつけた技の名前を大切にしたいものである。