【第3回】 王道を行く

技を使うときは、王道でいかなければならない。体を捻ったり、手さばきでやったり、無駄足をつかったり、力で押し付けたりして相手を倒すのは間違いである。何故ならば、たとえ倒したとしても、相手は納得しないし、そのうえ相手の頭だけでなく、体や筋肉までが共鳴せず反発するからである。正しく体を使い、技をかけると、相手は頭では対抗しようとしても体が自然と共感するものである。

王道の技というのは無駄の無い、自然の技である。無駄や無理がないので、最高の力が発揮されるし、美しいし、相手の体や気持ちに共鳴してもらえ、説得力がある。これが一番実感できる技は、正面打ち一教という技であろう。

技をかけても思う通りにはいかないのが普通である。すると、基本や鉄則を忘れて、体を捻ったり、手を振り回して倒そうとする。稽古の本来の目的を忘れて、倒すことに気がいってしまう。技の稽古の目的は、相手が気持ちよく倒れる王道を求めるものである。王道を離れた技は、相手にも自分にも害(体や精神を痛める)を及ぼすだけであり、しいては社会にも害をおよぼすことになる。

ビジネスにも王道があるはずである。王道をはずれたビジネスは自分だけでなく、相手にも社会にも悪影響を及ぼすが、これがますます多くなっているのはこまったものだ。儲ければいいとそれを目的にしているがこれは稽古と同様、間違いである。王道のビジネスをやった結果、儲けるということにならなければならないはずである。

稽古もビジネスもそして学校でも王道を進むのは今日ますます難しいようであるが、少なくとも稽古では王道をいくよう努めなければならない。そして、それを社会やビジネスに還元し、少しでもいい社会や世界にすべくお役に立ちたいものである。