【第80回】 脇を締める

武道では、脇を締めろといわれる。剣道でも、相撲でも、脇があまいと力が出ないものだ。合気道でも、脇があまいと技は効かないし、場合によっては相手に崩されたり、絞められたりしてしまって、危険でもある。

どんな合気道の形(かた)でも脇は締めなければならないが、脇があいていると絶対といっていいほど効かない形がある。例えば、後両手取りである。腕と脇があいていると相手との接点(手首)に力が集中できず、逆に相手に引っ張られてしまい、引き倒されてしまう。また、脇があいていると相手の手が離れてしまい、相手にその離れた手で首を絞められてしまう。技をかけるため腕を上げるときは、脇を締めて腕が脇をこするように上げなければならない。同時に、真上を向いている手の平を、小指を中心に回転させつつ上げる。

合気道のすべての形や業は脇をしめなければならないが、その中でも脇があまいとなかなか上手くいかないもの、言い換えると、形と業を稽古することによって脇が締まってくるものがある。例えば、前述の後両手取りの他に、諸手取り呼吸法、片手取り呼吸法、坐技呼吸法、逆半身片手取り四方投げ、二教、三教、四教等々がある。

脇を締める要領が分かれば、すべての形(かた)や業でその稽古ができるようになるはずだ。

しかし、脇をしめるということは、脇と腕を密着させることだけではない。脇と腕に空間があっても、脇と腕が結びついていればよい。腕が脇と結んでいるということは、腕が体幹、とりわけ腰と結んでいることであり、相手は腕をつかんでいるつもりでも、実際は腰や体幹を掴んでいることになる。脇があいているということは、腕が腰や体幹と結ばず、離れていているため、腕だけになって、重さもなければ、力も出ないことになる。

脇をしめる稽古を合気道の形(かた)の外にもやろうと思えば、木刀や杖の素振りがよい。剣や杖を切っ先から使うのではなく、脇をしめて使うような稽古を意識してやるとよい。