【第668回】 阿吽の呼吸で体を柔軟に

阿吽の呼吸を研究しているが、この呼吸は摩訶不思議で、奥深い呼吸である。また、この阿吽の呼吸が身に着かないと、生身の人間が天と地を結んだり、超人的な力を発揮したり出来ないだろうと思うし、更に、魄から魂の稽古にも進めないだろうと思う。

合気道の技の形は体の節々をときほごす準備であるといわれるが、この形稽古の前に体の節々をときほごす準備の準備がある。一般的には、これを準備運動という。体の筋肉や関節を柔軟にするためのストレッチ運動である。
最近、このストレッチ運動を阿吽の呼吸でやるのがいいことがわかった。

ストレッチはただ息を吐いてやっても効果は少ないし、体を痛めるはずである。
初心者は息を吐きながら、関節を曲げたり、前屈したりするが、これは体を固めることになる。息を吐くと自動的に体が固くなるよう、防御態勢になるように、体はつくられているように見える。
但し、息を吐かないわけではない。息を吐くのだが、はじめから吐くのではなく、初め一寸吐いて、次に息を吸い、そして三段目で大きく吐くのである。つまり、一度息を吸って柔らかくなったところで、息を吐いて更に伸ばすのである。
息を吐いてやる初心者は、この最初と最後の息を吐くところだけを取り入れて、息を吐いてやっていることになる。

これまでは、このストレッチの準備運動はイクムスビでやるのがいいと書いてきた。イクムスビのイーで息を一寸吐き、そしてクーで息を吸いながら、伸ばす箇所に力を加え、ムーで息を吐きながら、更に力を加えて伸ばすのである。

このイクムスビで、体の節々が相当柔軟になり、しかも強靭になるが、更に効果的なのが阿吽の呼吸であることが分かった。
その呼吸のやり方は、技の形稽古の技づかいでの阿吽の呼吸でやるのである。まず、天の気を“ン”で腹に落とし、その気を下の地に落すと同時に、阿吽の呼吸の“ア”で息を地に落とし、そして天に上げるのである。この対抗力の呼吸に合わせて、節々を伸ばすのである。

”ン“で伸ばす箇所に別の手が接触し結ぶ、”ア“で息を吸うと体全体が気で膨らみ柔軟になり、伸ばしたい節々も柔軟になる。阿吽の”ア“は、自然に緩み、自動的に体を気で満たし柔軟にしてくれるようである。後は”ン“で息を吐くと、更に力が加わり伸ばす箇所が柔軟で強靭になる。

この様に阿吽の呼吸には、不思議な働きと効果がある。まずは、体の節々のストレッチに応用し、そして技の形稽古でつかうようにすればいいのではないだろうか。