【第66回】 肩を貫く

人類は有史以来、何万年、何千年と自然と戦い、他部族や他人と戦ってきて、勝ち残ったものが今の物質文明に生き残っている。人類は自分たちのこれまでの戦いを克服してきたことを意識的、無意識的に誇り、自分の力の強さを誇っているように思える。

合気道の稽古でも、よほど注意しないと、自分の力を過信したり、頼ったりしてしまう有史以来蓄積された本能が頭をもたげてくる。そしてその力に頼り、技をかけるとき手を振り回してしまう。

手先だけの力では、大きな力も出ないし、合気道で求めるハイグレードな力も出ない。強力でハイグレードな力は、自分の体重、地の引力と斥力、それにスピードと拍子などを掛け合わせたところから出てくる。そしてこれを上手く活用し、求める力を出するために絶対必要なことの一つは、「肩を貫く」ことである。肩が貫けていなければ、手先の力と下半身からの力が肩で引っかかって止まってしまう。肩に力を引っ掛けて無理してやり続けると、肩を壊してしまうことになる。

肩を貫いた体をつくるためには、肩が貫ける稽古をするのがいい。合気道にはそれに相応しい運動と形があるので、肩を貫くことを意識してその稽古をするのがいいだろう。次の運動と形は肩を貫くためには分かりやすいし、また、肩を貫かないと上手くできないものである。

1.肩貫き運動

〇 正面打左右
〇 横面打左右
稽古では打つときも、しっかり肩を貫いて打たなければならないことはもちろんである。
〇 肩貫き八方切り+突き運動(仮称)(詳細は、第55回「手刀」参照)


2.肩を貫く稽古に適した形
〇 片手取呼吸法
 (首に掛かった腕は横に振らず、垂直に肩を貫いて上げる)
〇 四方投げ(肩をまわして大きく動かす)
〇 突き入身投げ
〇 坐技両手取り後方投げ(仮称)
〇 両肩取り
〇 後ろ両肩取り(立ち技と半身半立ち技)
〇 片手取り呼吸投げ