【第658回】 槍と剣

合気道は魂の学びであると、大先生は「合気道は魂の学びであります。ちょうど丸に十を書いて三角が四つ寄っております。これは魂が剣と槍とになっています。」と云われている。つまり、合気道は魂の学びであり、剣と槍の学びであるということになる。

槍は天と地を貫く縦に働く。神様でいえば、伊邪那岐、そして天の村雲九鬼さむはら竜王であり、自然で云えば、天地の気と息、人間でいえば、足・胴体・首・頭が一軸になった姿であろう。

この縦の槍に対して横に働くものが剣(けん・刀)である。神でいえば、伊邪那美、人間でいえば手ということになる。

この槍と剣にも宇宙の法則がある。
まず、縦の槍から動かなければならないことである。伊邪那岐が先に動くべきところを伊邪那美が先に動いてしまったために、不完全なヒルコが生まれてしまったのである。技をつかう場合も、縦の槍からつかわなければ、いい技は生まれず、ヒルコの技になってしまうことになるという教えになる。
これで技を掛ける場合、体は腰腹、足、そして手の順序でつかわなければならないということが分かる。

尚、いにしえの昔の剣(けん・刀)の前は、諸刃で先がとがった剣(つるぎ)が槍と剣(けん・刀)の働きをしていたはずで、恐らくこの剣(つるぎ)は、まず槍のように突いて、そして刀のように切ったはずである。

人の槍は足・胴体・首・頭が一軸になった状態であるが、この部位が槍のように、折れ曲がらない、真っすぐの一軸の姿にならなければならないことである。以前から、手は剣(刀)のように折れ曲がらず、真っすぐにつかわなければ書いているように、足・胴体・首・頭も一軸になって槍とならなければならない。
技をつかうために歩を進めるのも、この一軸の陰陽十字の移動でなければならない。足が折れ曲がったり、胸が閉じたり、首や頭が垂れないようにしなければならない。

このために、特に足、正確には下肢を鍛えなければならない。下肢は足と脚で構成されている。足はくるぶしから先、脚は骨盤(腸骨、仙骨、尾てい骨、恥骨座骨で構成)の下から足首までである。
くるぶしから先の足、くるぶしから膝、膝から骨盤までを各部位ごとに鍛え、そして下肢として一つにしっかり働くように、息と気を入れて鍛えるのである。これは手(手首から先の手先、手首から肘、肘から肩)をここに鍛え、一本の刀としてつかうのと同じである。

鍛えるのは、基本的には道場での相対稽古の形稽古で、その部位を意識して鍛えればいいが、四股踏みで意識してやると、各部位がしっかりと鍛えられる。