【第65回】 支点を動かさない

長年、合気道の稽古をしていても基本の形(かた)が満足にできないで悩んでいる人が多くいる。しかし、何故うまくいかないのかをあまり考えていないようで、繰り返し稽古さえしていれば、その内に出来るようになると思っているようだ。その結果、二段、三段になっても、一教裏、三教、小手返しなどの基本中の基本の形が、自分が納得できるようにできず、満足できないでいるのである。

これらの形が基本であるのにできない理由の一つは、支点を大事にしないことにある。技をかけるとき、相手に接した部位が支点となり、支点が左右の手に規則正しく陰陽変化するわけだが、この支点を動かしたり、左右の変化が乱れたり、手足が連動しなかったり、居ついたり、ぶつかったりして上手くいかないのである。

支点を大事にする動きをするためには、そのための体をつくらなければならない。正面打ち一教裏(右半身)を例にとると、まず、右手で打ってきた相手の右手と接する部位(尺骨)が最初の接点(支点)となる。支点をそれ以上動かさず、すかさず左手と左足を連動して相手の側面に進み、左手を相手の肘にくっ付ける。これが第二の支点となる。次にこの支点を動かさず、引っかかってる右手を支点(第三の支点)とし、右足と連動して体を裏に転換する。このようにここまで三回支点が変化するが、この後の押さえて立ち上がるまでもう二回の支点変化があるので、一教裏では計5回支点が変わることになる。支点は通常、手となるが、支点で相手とくっ付けるのは、手と連動する足の動きといえる。

合気道の形(かた)で、上記の一教裏もそうであるが、この支点をむやみに動かしたり、陰陽を間違えたりしてしまうと、技が上手く決まらない形がある。そこで、その形を稽古することによって支点を動かさない合気の体をつくればいいと考える。逆に言うと、その形ができれば支点を動かさない体ができたといえるだろう。

〇 正面打一教裏
〇 胸取り二教裏
〇 胸(肩)取り内回転腕からみ
〇 後片手取首絞
〇 天地投げ
〇 四方投げ(注;支点を動かすと、合気道を知らない素人にはかからない)

この形を「支点」を意識してやるといいだろう。「支点」を動かさないよう、陰陽、左右に足とともに変化させることができるようになれば、他の形、それに突き技、締め技などもやりやすくなるはずである。