【第644回】 手首を鍛える

合気道を稽古し続けていくと体が変わってくるが、その中でも一番目につくのが手首であろう。稽古をするに従って、手首が太く、円くなる。そして一般的に云えることは、手首が太く、円くなればなるほど、稽古年数が長く、そして鍛えているということになる。

合気道を稽古していない一般人と比べれば、合気道の稽古をしている人の手首は、太く、円いから、合気道の稽古を真面目にやれば、手首は太くなるわけである。しかし、合気道の稽古人は一般の人と比べて、太いとか強いとか言って喜んではいないはずである。比べるとしたら、稽古をしている仲間同士でのことであろう。仲間や他の稽古人よりも強靭な手首にしたいと思うということである。

手首を少しでも強靭にするためには、手首が鍛えられるように、道場での形稽古をしっかりしなければならない。極限まで体と力をつかい、痛さや辛さを辛抱し、手首にも気を入れた稽古をすることである。

更に手首を鍛えたいならば、稽古時間後の自主稽古で鍛えればいい。
手首を鍛える最適の稽古は「二教小手回し」であろうから、稽古仲間にこの二教の裏を掛けて貰うのである。例えば、右と左各々10回ずつ、力一杯描けて貰うのである。この10回掛けて貰うところにひとつのポイントがある。もし、一回だけとか、回数を決めないで掛けさせると、相手は何とか決めてやろうと、ムキになって掛けてくるので、耐えにくい力を出して来たり、態勢を崩してしまったりして、いい稽古になり難い。
それに反して、10回(勿論20回でも30回でもいい)と回数を決めると、二教を掛ける相手は拍子にのって掛けてくるので、無理な力にはならず、手首を鍛えるのが容易になるのである。

手首を二教で鍛える次のポイントは、息づかいである。簡単に言えば、二教を掛ける際の息づかいである。つまり、イクムスビの息づかいで、二教裏の受けをするのである。イーで相手と結び、クーで息を引きながら手首を締めさせ、そしてムーで息を吐いて手首を決めさせるのである。
この息づかいがポイントである。初心者は、手首を締めさせるクーのところで、息を引くところを、息を吐いて頑張ってしまう。それ故、手首は固まってしまい、柔軟にならないし、強靭にも鍛えられない事になる。

このクーのところで息を引く(吸う)と、手首に気が満ち、手先から気が発散するのである。この気によって、相手の手首を締める力に合わせて手首を鍛える事ができるのである。これが三つ目のポイントということになろう。

更に、手首を二教で鍛えたければ、左右の手首を二人同時に掛けて貰えばいい。これは締められ、決められて痛くとも、手を叩いて参ったというわけにいかないので、相当きついが、いい稽古になるはずである。入門したての若い頃は先輩によくやられたものだ。