【第639回】 膝と母指球を結ぶ

合気道で技をつかうための足は撞木足である。足が十字々々になって歩を進めるのだが、前を向いている足先を十字に返すのは母指球である。母指球が支点となり、体が内転することによって十字の足になるわけである。人の体の精妙さに驚かされるところである。

しかし、ただ単に母指球で体を内転して十字の足にしようとしても十字にはならないし、無理してやれば、腰や膝をひねってしまうことになる。稽古人の多くが、腰や膝を痛める原因がここにもあるだろう。体はひねるのではなく、十字に返さなければならないのである。
それではどうすればいいかというと、母指球を支点として、腰腹で膝を十字に返すのである。
そのためには、膝と母指球をしっかり結ばなければならない。しっかり結んで、母指球と膝を一本のしっかりした軸にするのである。そしてこの軸によって腰腹を十字に返すと膝も十字に返るのである。

膝が十字に返らないと、腹も十字に返らない。膝を返さないで腹をかえそうとすれば、先述のように、体(腰、膝)を壊すことになる。

大事な事は、膝と母指球をしっかり結んで、一本の軸にあることである。
しかし、母指球で直接着地をすれば、膝に衝撃があるので、膝をいためることになる。それ故、足の着地の法則である、踵で着地し、そして踵からの体重を、小指球そして母指球に移動し、そして膝と結ばなければならないことになる。

膝と母指球がしっかり結べば、体が安定し、そしてまた、動きやすくなるし、力もでる。大先生や有川先生のあの安定した、そして力強い姿、形は、この膝と母指球(足)が一軸にしっかり結んでいたことにもあったと拝察する。
逆に、初心者など、膝と母指球がしっかり結んでいなければ、体は不安定になり、スムーズな動きもできないし、そして力も出ない事になる。それでも力を入れて、相手を投げようとすれば、体を痛めることになる。
また、膝と母指球がしっかり結んでいないと、膝が不安定になり、体を下ろした際に、膝がつま先の先に出てしまい、膝を痛める事にもなる。

膝と母指球がしっかり結んで、一本の軸となって機能するように稽古をすることも必要であろう。