【第628回】 一教〜四教で手首、肘、肩、胸鎖関節を

合気道の基本技は、肉体の各部位を鍛えられるようにできており、また、その当該部位を上手くつかわないと、その技が効かないものと考えている。例えば、一教、二教、三教、四教はその典型であるだろう。とりわけ、一教(正面打ち)は難しいが、難しさの最大のポイントがこの体の部位のつかい方とその鍛え方にあるように思う。

どの技でもそうであるが、一教〜四教が分かり易いと思うので、一教〜四教で説明することにする。
一教〜四教で上手くつかわなければならない体の部位は、次のようであるので、そこを鍛えてつかわなければならいことになる。
勿論、その部位をつかうに当たっての根底には、手先と腰腹が結んで、その結びが切れないように、一本の手として、体と技をつかわなければならないことである。

  1. 一教(正面打ち):相手が打ってくる手を手刀で受ける時とその手を抑える際、手首を支点にして、手先だけをかえす(手刀で切る)。一教ではこの手先を2度かえすことになる。また、手先(手刀)と腹はしっかり結ぶことが重要。
    大事な事は、動かす部位は手首を支点にした手先だけで、他の部位を動かさないことである。初心者は手の他の部位も一緒に動かしてつかってしまうので、一教の技が効かないわけである。この手首の一点の支点を動かしてしまったり、他の部位も動かしてつかう我々の稽古を見て、有川定輝先生は“バラバラ事件”と茶化しておられた。
    尚、この大事な事は、この後の2、3、4でも同じである。
  2. 二教:肘を支点として、肘から先の腕と手先(手の平)を腹と結び、一本としてつかい、手首のところで手先が折れ曲がったり、肘から上の上腕を動かさないようにする。二教は小手回しという。小手とは肘から下であるから、小手回しとはこのことは指しているはずである。
  3. 三教:肩を支点に上腕から手先まで一本の手として、腹と結び腹でつかう。三教は小手ひねりと云う。ひねられる小手は受けの相手であるが、ひねるのは肩を支点とした上腕であると考える。
  4. 四教:胸鎖関節を支点し、胸鎖関節から手先まで一本の手としてつかう、と考えている。
因みに五教(写真)であるが、五教は1−4を統合してつかうものと考える。とりわけ、五教の受けでは、手首、肘、肩が直角(十字)に押し付けられるので、1−4の支点になる箇所が鍛えられる。

さて、動かさない支点は、一教は手首、二教は肘、三教は肩、四教は胸鎖関節と、体の末端の手先から、体の中心の胸鎖関節へと段々と体の中心に向かって変わっていくわけだが、これが、一、二、三、四の命名となったものと考える。この命名は、一、二、三、四と末端から中心へと順序だっており、自然であり、覚えやすいし、混乱がない。だから、今後も今の三教が一教という名称に変わることも、一教が十教という名称に変わる事もないはずである。

相対での形稽古の一教、二教、三教、四教で、手首から先、肘から先、肩から先、胸鎖関節から先を鍛えなければならないが、更に鍛えたければ、素手での素振りや剣の素振りで、その各部位を鍛えるのがいい。只振るのではなく、その部位を意識して振るのである。手首、肘、肩、胸鎖関節を支点に振るのである。また、杖の素振りでも意識してやれば、各部位は鍛えられる。

イラスト写真 『合気技道法』