【第625回】 阿吽の呼吸で技も準備運動も

大先生も重視されている阿吽の呼吸を、これまで研究し、体や技で試し、そしてその結果を何回かに亘って論文にしてきた。
これまで分かってきたことは、阿吽の呼吸は間違いなく重要であり、技には阿吽の呼吸が欠かせないと確信したことである。

阿吽の「阿」には、宇宙の気、森羅万象の気を体内に入れる働きと、それを腹から発散する働きがある。従って、「阿」は、息を引く(吸う)のだが、腹からは気を発散しているのである。また、体は腹を中心に、外側へ伸びるのである。「阿」は息を吐くのではなく、息を引いて出るものであり、決して、通常の会話や合唱で出す単なる「ア」ではないのである。

具体的に「阿」を出すためには、腹にちょっと力を込め、腹を息と気で満たし、そして腹に気を満たしたまま、「阿〜」と息を、腹を中心に体の隅々まで入れていく。そうすると体に息が入るにつれて、気(エネルギー)が腹から発散し、手先からも足先からも気が出ていくようになる。また、体は腹を中心に伸び、腹はしまって張る。
この「阿」をよく表わしているのが、下の写真左である。息を入れ、腹が張り、腹をから中心に体中から気が発散しているのがわかるだろう。

合気道では、「阿」など引く息は火であり、□(四角)であるといい、引く息で全部己の腹中に吸収するのであるということも、この写真でよくわかる。
息を吐いて腹に収めているから、腹にそのための筋肉が表れているわけである。只、「ア」と息を吐いていっても、息を吸っていっても、このような腹や体の筋肉にはならない。

因みに合気道で、「吽」は水であり、○(まる)であるという。「阿」で吸った息を「吽」で、一元の神に収めるのである。腹は宇宙の一元の神に相当するわけだから、腹に収めることになる。

この阿吽の呼吸で技をつかうのである。一教や入身投げなどの正面打ちでも、四方投げや呼吸法などの片手取りや後ろ手取りでも、すべて阿吽の呼吸でやらなければならないと考える。
また、体の節々を解きほぐす準備運動や柔軟運動でもこの阿吽の呼吸でやるべきである。この阿吽の呼吸でやらないと、柔軟にすべき箇所に力が入らず、体の節々が柔軟にならないだけでなく、また、体を壊すことになりかねないからである。