【第617回】 胸を鍛える

合気道を長年稽古していると、腹ができてくる。腹ができるとは、腹がしっかりすること、息を吸っても吐いても、出たり引っ込んだりせず、常に張っている腹であると考える。
初心者の頃は、激しい稽古をすると帯も袴も臍の上までずれ上がってきたものである。まわりの先輩や先生を見ていると、多少動いても、帯も袴も腹にずれずにしっかりと締まっていて羨ましく思ったものだ。
最近、やっと帯も袴もずれなくなり、腹は膨らみ、強固になってきたようだ。

腹ができてくると、今度は胸が気になってくる。胸も胸板厚く、強靭にしたいと思うのである。名人や達人の胸は厚く、強靭である。開祖の若い頃の胸など、まるで鎧を身につけているような厚さと強靭さを感じる。(写真)

腹が出来てきたのは呼吸によると考える。イクムスビの息づかいで技をつかってきたからだと思う。特に、イーとムーで息を吐き、クーで吸うことによって、腹が柔軟にそして強靭になったと考える。

そこで腹ができたのは呼吸ということにすれば、胸をつくるためにも呼吸でつくればいいことになるだろう。胸は、腹が縦のイー、ムーに対し、クーで息を吸う(引く)ことによって鍛え、つくっていけばいいだろう。
特に、引く息は「火」の息であり、自由であるから、大きくも小さくも、また、早くも遅くもできる。引く息を自由につかって、胸を鍛えることによって、胸が鍛えられ、厚みが出、強靭な胸になると思う。
技は腹だけでは上手くいかない、胸もつかわなければならない。胸が鍛えられれば、技が変わってくる。

縦横、十字の息づかいで技をつかうことによって、腹と胸が出来るようである。腹も胸も、どちらも呼吸によって鍛えられるとものと考える。
最近は、鍛錬棒をこの息づかいで振ることにしたが、腹だけでなく胸にも効果があるようだ。