【第610回】 両手両足を結んでつかう

合気道は宇宙の営みや経綸を身につけていくために、宇宙の法則に則った技を練っていくわけだから、いい技を生み出すためには、宇宙の営みや法則に則した稽古をしなければならないわけである。言葉を変えれば、いい技が生まれないのは、力不足の他に、法則に反したり、法則を無視した技づかいをするためだと言えるだろう。
宇宙の法則とは、時間や場所、時代や地域(つまり、人種や民族)に関係なく適合する公理である。

宇宙の法則の一つとして陰陽の法則がある。「天の気は陰陽にして万有を生み出す」。天の気(エネルギー)は陰陽であり、万有万物を生み出すから、技も生み出すのである。
しかし、この陰陽の気から技を生み出すのは難しい。やるべき事をやらなければ出来ないからである。
例えば、己の体を陰陽につかうことを身につけなければならない。まず、左右の手を交互に陰陽につかうことである。次に、足も左右交互に陰陽につかうことである。この事は、これまで何度も書いてきているし、そう難しいことでもないはずである。
そして更に、両手両足を結び、同じ側の手と足を陰陽でつかわなければならないと書いた。
しかしながら、この「両手両足を結んでつかう」が予想以上に重要であり、修得が難しいことがわかったので、今回、これを研究することにする。

「両手両足を結んでつかう」とは、同じ側の手(先)と足(底)が切れずにつなげて、陰と陽につかって技を生み出していくことである。陽で働いている手と足は手と足が結び、また、陰の側の手と足も、結んで待機していなければならないのである。

しかし、同じ側の手と足を結び、切れないようにつなげて一緒につかうのは容易ではないはずである。何故なら、いくら気持ちでそう思っても結ぶものではないし、繋がるものではないからである。
それではどうすれば両手両足を結べるかということになる。それは呼吸、息づかいで結ぶのである。

まずは、手先と腰腹、それに足と腰腹を結ばなければならない。そして腰腹で手と足をつかうようにしなければならない。その結果、手と足に力と気が入り、しっかりした手足が出来るのである。
次に、この手足を息づかいで結んでつかうのである。つまり、①片方の足が着地したら、息と力(気)を腹の一点に集中する。②腹の力を抜くと息が自然と上に上がってくる。また腹から下にも息と力(気)多少下がっていく。ここで体と地が密着(合気)する。手先まで気が満ちる。③上がってきた息と気が胸の高さに来たら、胸を拡げ、息と気を横に入れていく。そうすると、同時に腹から息と力が足元の地に落ちていく。足に気が満ちる。④ここで気で満ちている手先と足が結びつく。相手の手とも結んでいるはずだから、ここから相手を制することができることになる。これが息の陰陽、十字、水火の働きであろう。
但し、注意しなければならないことは、他方の手と足も互いに結ぶように気をつけなければならにことである。
この息づかいが、開祖が言われる「天地の息づかい」であると思う。開祖は、「天の息と地の息によって陰陽をつくって陰陽の交流によって万物(技も)を生み出す」(『合気神髄』P.149)と言われているからである。

また、陽側の手と足だけをむすぶのではなく、反対側の陰の手と足も結び、更に陽の手と陰の足も結び、両手両足を、陰陽と陰陽の組み合わせで規則的につかうことによって技を生みだしていかなければならない。陰陽と陰陽の組み合わせが必要だからである。
開祖は、「陰陽をこしらえ、陰陽と陰陽とを組んで・・・技を生み出してゆく」と言われているのである。

陰陽の組み合わせは、非常に繊細で重要なようなので、回を改めて研究し、書くことにする。